2016年のホノルルフェスティバルのため完成したハワイアンキルトです。

2009年のホノルル・フェスティバル時に、ジョン・セラオさん自ら私に特別に描いてくださった、フラに使う楽器がたくさん入ったデザインのハワイアンキルトをやっと完成することができました。お亡くなりになったハワイアンキルトの大御所、ポアカラニさんのご主人であるジョンさんは、今でも毎週土曜日に、イオラニ宮殿の敷地内でハワイアンキルトの会をされています。ジョンさんのデザインは素晴らしく、キルターであれば、一生に一度はジョンさんのデザインを作成してみたいものです。そのジョンさんから私の為にデザインを描きたいとおっしゃってくださり、私の横に座ってデザインを描き始めてくださいました。それはそれは素晴らしい出来事でした。私はフラはやりませんが、なぜか私のオーラのインスピレーションがこちらのデザインでした。昔は音楽をずっとやっていたので、そのオーラが出ていたのでしょうか。ジョンさんの手は魔法のように楽器を描いていました。

ジョンさんが私から出るオーラを感じながら、デザインをして下さいました

ジョンさんが私から出るオーラを感じながら、デザインをして下さいました

ジョンさん一家の歴史を少しお話しますね。
ジョンさんの奥様だったポアカラニさんはキルトマスターのおばあ様に育てられました。ですが、生まれたときから右手がありませんでしたので、家族みんながハワイアンキルトをしている中、片手では難しいと言われ、おばあ様が亡くなるまで、キルトには手を付けられなかったそうです。その後キルトを始め、35年以上ハワイアンキルトの第一線を歩かれました。その旦那様のジョンさんはハワイ警察を退職され、もともとハワイアンキルトやフラをたしなむ家庭に育ったため、ポアカラニさんの手伝いを始められました。1972年にポアカラニというハワイアンキルトの会社を立ち上げました。ポアカラニさんの家族に代々伝わるキルトパターンは、大きなベッドサイズのものが300種類くらいあるそうですが、ハンディキャップがあるポアカラニさんの為に、ジョンさんは大きなベッドカバーのデザイン30種類を22インチ(55cm)角のクッションサイズに描き換えました。それをもとに、初心者にはこのサイズのキルトを教えたと言います。

それから二人はハワイアンの人に限らず、習いたい人すべてにハワイアンキルト・レッスンの門戸を開き、ハワイアンだけの狭い風習に捕われず、自由に、一人でも多くの人へ伝えたいという願いを込めたので、現在のように世界各地の人たちにハワイアンキルトの輪が広がりました。今では娘さんのシシーさんとタフィーさんとともに、続けていらっしゃいます。

ジョンさんは夢の中でデザインを描くそうです。現在までに1000以上のデザインを描かれました。しかし、絶対に描かないものは鳥と人だそうです。鳥のデザインを描いてあげる人は必ず、ハワイからどこかにいなくなってしまうという苦い思い出があるそうです。人のデザインをすると、キルトの中の人が夜な夜な歩き回ってしまうので、描かれないということでした。

ジョンさんのお話を伺っているとおもしろい事ばかりです。私は折を見て、お話を聞かせていただいています。

ジョンさんはデザインを始めると、止まらなくなります

ジョンさんはデザインを始めると、止まらなくなります

ジョンさんにデザインを描いていただいてから、キルトの色についてかなり悩みました。伝統的なハワイアンキルトは2色の無地を使います。楽器の色やフラの色について考えましたが、なかなかいいアイディアが浮かびませんでした。そこでハワイ王国第7代のカラカウア王が禁止されていたフラを復活されたということで、王室にちなみ、王室カラーである黄色と赤を使ってみようと考えたのです。
とても伝統的な色なので、一生に一度は作ってみたいと思っていましたが、このような機会に恵まれるとはなんとラッキーなことかと思い、すぐに作り始めました。アップリケは数ヶ月で完成していました。
そして2012年のホノルルフェスティバル時にアップリケ完成をジョンさんに見ていただきました。素敵な色ということでお褒めの言葉をいただきました。

ホノルルフェスティバルにて、色の選択について語っているところです

ホノルルフェスティバルにて、色の選択について語っているところです

その後キルト芯を付けました。これがすでに2013年の6月でした。なかなか目標の日にちが決定しないと進まないものです。ここでやっとキルティング準備完了したところです。

キルト芯を付けて準備完了

キルト芯を付けて準備完了

そしてキルティングを始めたのですが、この写真を撮ったのが翌2014年1月。ということはそれまで何もしてなかったのでしょうか。。2014年3月のホノルルフェスティバルでの展示はまず無理でした。

キルティングを始めたようです

キルティングを始めました

そしてこの年の3月のホノルルフェスティバルにて、キルティングのデモンストレーションの素材にさせていただきました。色が色なだけに目立った作品です。

2014年のホノルルフェスティバルにてデモンストレーションをやりました

2014年のホノルルフェスティバルにてデモンストレーションをやりました

そしてそれから2年後のホノルルフェスティバルには展示しますという宣言をジョンさんにしたため、完成が必須でした。飾りキルトなどはなんとかこの間に進めていたのですが、本格的にエンジンがかかってきたのが、2015年12月。この頃より休みの日は15時間のキルト漬けが始まりました。もっと少しづつ進ませておけばよかったものを。。といつも後悔します。そして今年のバレンタインの頃にはやっと楽器の飾りキルトを悩みながら進めることができるようになりました。

ウリウリの楽器の飾りキルトはジョンさんの本などを参考に、円のテンプレートを作ってみました

ウリウリの楽器の飾りキルトはジョンさんの本などを参考に、丸のテンプレートを作ってみました

そして3月はラストスパートです。周りのエコーキルトを進める毎日でした。毎日キルトをやりすぎて、左手首はしびれ、肩はもちろん、腰もばりばりに硬くなり、目は痙攣を起こし続けるというとんでもなく調子の悪い中、続行しました。黄色と赤という色は目にかなり酷なのかもしれません(笑)。予定を立てていても、ノルマに到達しない日もありました。

エコーイングを毎日毎日果てしなく続く作業でした

エコーイングは毎日毎日果てしなく続く作業でした

そしてついに3月8日に完成しました。バイアスを付け、最後のイプヘケの飾りキルトを考え終了ということになりました。完成してしまうとかなり悲しいものがあり、手持ち無沙汰になってしまうのが現実です。そしてハワイアンキルト中毒者はまた次のキルトに手を染めてしまうという結果になります。

そしてジョンさんに完成の報告をさせていただき、是非ネーミングをしていただきたいとお願いしました。

ホオロヘ・イ・ナ・メレ・オ・マコウ・クプナ
Ho’olohe i na mele o makou kupuna
Designed by John Serrao

という素晴らしいハワイ語の名前をいただき感動でした!
「クプナの音楽を聴きましょう!」という意味で、音楽が大好きな私の為に、オリジナルで描き下ろしてくださった特別なデザインです。晴れてホノルルフェスティバルにて展示できたこと嬉しかったですし、肩の荷が下りました。デザインをいただいてから、足掛け7年かけて完成できたこと嬉しく思います。一生大切にしたいキルトになりました。
しかし黄色と赤の色使いは難しかったです。

完成キルトとジョンさんと

完成キルトとジョンさんと

By アン

 

★アンのハワイアンキルト5月の日本レッスンのスケジュールが決定しました!

詳しいことはこちらから

東京レッスン
→ http://www.anne-hawaiianquilt.com/ホーム/レッスン/2016年5月東京レッスン.aspx

 

★アンのハワイアンキルトの展示&販売のお知らせ

三越日本橋本店
タイトル:ハワイの暮らし
会期:6/8-6/14
場所:新館6階=プロモーションスペース

銀座三越
タイトル:ハワイの暮らし
会期:6/8-6/21
場所:10階=グローバルメッセージ

伊勢丹新宿店
タイトル:ハワイスピリットを知る~ケイキ(子供)のキルトから知るモチーフに込められた想い~(仮)
会期:7/20-7/26
場所:本館6階=センターパーク

入場無料です。
みなさんお誘いあわせのうえお越しください!

 

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筆者プロフィール

藤原小百合アン
藤原小百合アン
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。

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