ハワイ島最大の滝であるアカカ・フォールズは観光地として人気があるだけでなく、伝統文化の時代から貴重な淡水の供給源として、また神話にもよく登場することで、ハワイの人々にとっては特別の存在です。この滝の名がついたハワイアンソングも、ハワイ州では多くの歌手によって唄われてきました。

アカカ滝全景

アカカ滝全景

アカカの滝はマウナ・ケア北麓の伏流水を集めたコレコレ川から流れ落ちる滝で、公園の別の場所からはもうひとつの滝であるカフナ滝も見られます。滝の周辺は一周640mほどの散策路になっていて、州立公園に指定されています。公園内にはバナナやヘリコニア、ホワイトジンジャーなど、さまざまな熱帯の花があります。ただしハワイの固有種や在来種はあまりありません。入口で入園料を支払い、通路を左回りに進むと最初にアカカ滝が、そこからさらに進むとカフナ滝が現れます。

滝壺に架かる虹

滝壺に架かる虹

アカカ滝は133mの落差があります。多段の滝では島内のヒイラヴェ滝のほか、オアフ島やモロカイ島にも高低差のある滝がありますが、アカカ滝は単一の落差ではハワイ最大です。増水時には轟音を立てて流れ落ちるので迫力ある光景を楽しめます。見学は午前中の方が光線の角度(入射角)がよく、滝壺に虹がよく出現します。

アカカ滝の神話

この滝については、さまざまな伝説が語り継がれてきました。そのうちのひとつを紹介しましょう。その昔、ホノムーの集落にアカカという戦士のリーダーがいました。強くてハンサムな彼は島中にその名を轟かせ、若い女性たちにとっては憧れの的でした。ある日のこと、アカカの妻が遠く離れたヒロの村に両親を訪ねに行きました。

周遊路とアカカ滝

周遊路とアカカ滝

アカカは魔が差し、ホノムー近くにある渓谷の北側に住む、かつての恋人に会いに行きました。 彼女の名はレフアと言い、良い香りを放ちました。しかし突然、妻が戻ってきました。アカカは慌てて裏口からレフアの住まいを出て峡谷を渡り、南側に住むもう一人の恋人であるマイレを訪ねました。マイレもまたかぐわしい香りを放ちました。

アカカの妻は、夫から放たれるレフアやマイレの香りを追いながらやって来ました。そして渓谷の縁から「帰ってきて!」と呼びました。その声を聞いたアカカは、またも慌ててマイレの住まいの裏口から飛び出し、今度は自宅への近道を小走りに戻りました。

ようやく家にたどり着いたアカカは、迎えに出てきた愛犬を抱きかかえながら、自分がしでかしたことを強く反省しました。しかし、愛する妻を欺いた自分を許せず、ある決意を固めます。彼は犬を連れて小屋を飛び出し、断崖絶壁の上の、突き出た岩に行きました。そして遠くの海を眺めると、崖から身を投げました。すると彼は滝に姿を変え、はるか下の谷へと落ちていきました。

これを見ていた愛犬は、やがて滝の上の岩に変身しました。(後を追って飛び降りたという話もあります。)少しして妻が現場に現れました。しかしすでに夫はいません。彼女は嘆き悲しみ、やがて滝の落ち口で大きな岩に姿を変えました。(三角形の巨岩は今も滝の落ち口にあります。)彼女は岩になって夫のそばに居つづけることを選んだのでした。

落ち口にある三角岩

落ち口にある三角岩

アカカの死を知ったマイレとレフアもまた泣き崩れ、アカカ滝から峡谷を少し下ったところで、自分たちも滝となりました。土地の老人たちによれば、月がなく風も吹かない静かな夜には、滝の轟音にかき消されそうになりつつも、妻が今も「アカカ!」と呼ぶ声が聞こえると言います。また、オヒアの小枝やマイレのレイで滝の上の大岩を打つと雨が降ると言われます。レフアとマイレが妻の涙を促すと言われます。

アカカに関わる伝説には、他にも、アカカが神であったとするものや、自殺ではなく事故だったという話など、多くのバリエーションがあります。落ち口から20mほど上流にある、妻が変身したとされる大岩は、ポハク・オ・カーロアと呼ばれます。

カフナ滝

カフナ滝

アプローチ

ヒロからは国道19号をハマクア・コースト沿いに北上し、かつてサトウキビの生産拠点として栄えたホノムーの町を目指します。この町に入るとすぐに現れる「AKAKA FALLS」の看板を左折し、標識に従ってしばらく上ると公園の駐車場に出ます。駐車場は狭いので、早めに出かけることを勧めます。

入園情報

(2021年6月10日現在の情報です。状況により変更される場合がありますので、訪れる際は必ず事前にWebサイトなどで確認をしましょう。)
アカカ滝州立公園はコロナ禍により閉鎖していましたが、2021年4月21日に再オープンしました。開園時間は午前8時から午後5時まで。駐車料は居住者は無料、非居住者は10ドルで、この他に入園料がかかります。ハワイ居住者は無料、非居住者(観光客など)は5ドルです。3歳以下は非居住者も無料です。現時点での規制ですが、入園にあたってはマスク着用が義務づけられ、ソーシャルディスタンスを保つことを指示されています。(※そのためには入園者全員が同じ進路を移動すべきです。通路は幅が狭いからです。しかしながらそのような指示はないようです。)

筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。

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