マカプウ岬トレイル

オアフ島の東端にはマカプウ岬があります。マカプウ(Maka pu'u)とはハワイ語で「飛び出した目」という意味です。岬全体が海に突き出していることが言葉の由来なのでしょう。

崖の上に建つマカプウ灯台

崖の上に建つマカプウ灯台

 

マカプウ山頂へ続く道はマカプウ灯台の業務用道路でもあるため頂上直下の展望台まで鋪装されています。しかし道路脇には溶岩の壁がつづき、ここがかつてはダイヤモンドヘッドと同じく、火山活動があったことを教えてくれます。

見取り図(Google Mapより)

見取り図(Google Mapより)

 

歩きはじめて間もなくプウ・オ・キパフルという噴火口跡への道が右手に現れます。近いので時間に余裕があればこちらも見ておくと良いでしょう。ここからさらに灯台への道を登り続けると、道は大きく左に折れ、眼下に絶壁が見えはじめます。そこをさらに進むと最初の展望台に到着します。ここにはザトウクジラの解説があり、10月から3月にかけてホエールウォッチングを楽しめます。

岬の断崖

岬の断崖

クジラ展望台

クジラ展望台

 

山頂が見えてくると道は二股となります。右手はマカプウ灯台関係者の道なので左手を進みましょう。山頂直下まで登ると、東の端に展望台への道が見えてきます。この展望台を右に見ながら直進すると舗装が途切れ、細い道が山頂に向かって延びているのが見えます。しかし棘のあるウチワサボテンの間を縫い、鋭い岩の近くを登るので、子連れや山歩きに馴れていない人はここで終わりにしておいた方が良いでしょう。

マカプウ展望台

マカプウ展望台

 

山頂を目指す場合は、踏み跡をたよりにサボテンと巨石の間を登ります。周辺には第二次世界大戦中に作られた多くのトーチカがあります。いずれも風化して崩れかけたまま放置されています。ここを抜けるとほどなく山頂が現れます。山頂にも崩壊しかけたトーチカがありますが、基部はかなり不安定なので乗るのは危険です。

山頂とトーチカ

山頂とトーチカ

 

マカプウ岬の標高は194メートル。通り抜ける風が気持ちよく、南西にココクレーターやココヘッド、その先にダイヤモンドヘッドが見渡せます。北にはマナナ(ラビット)島と、少し先にカーオヒカイプ(タートル)島を見ることができます。これらの島はネッタイチョウやグンカンドリなど、海鳥のサンクチュアリとなっています。晴れ渡っていれば西方遠くにマウイ島のハレアカラが雲海の上に浮かんでいるのを見ることができます。

山頂から北の海岸を臨む

山頂から北の海岸を臨む

 

灯台の歴史

上の展望台からは崖下30メートルほどのところに赤い屋根を持つマカプウ灯台を見ることができます。この灯台は1909年に建造されました。その岬は昔から航海の要所であったため、早くから灯台の設置が検討されました。マカプウ岬はオアフ島の南東端に位置し、航空路線が敷かれるまではアメリカ西海岸からホノルルへの海路における上陸地点でした。1888年、海運関係者はこの岬に一刻も早く灯台を設置するよう請願しました。しかし、灯台は1906年に合衆国下院が建設費を計上するまで建設計画が日の目を見ることはありませんでした。

1914年当時の灯台

1914年当時の灯台

 

建設許可が出るまでの間、灯台の青写真は年々強化されました。ようやく建設が始まったとき、マカプウ灯台に用いられたレンズは当時アメリカ最大であり、2番目に高い場所に建つ灯台でした。現在でも、海抜120メートルという高さは全米で3番目に高い灯台です。建物の高さは約14メートルです。

当初、マカプウ灯台のランプを点灯させるためには、アルコールバーナーが必要でした。これが1925年に起きた海難事故の原因となりました。4月25日の早朝、スタッフ2人がアルコール貯蔵庫を満タンにしました。その際、アルコールの一部がこぼれているのに気づかなかったため、ひとりがマッチに火を点けたときに爆発が起きました。灯台の入口付近にいた人は大怪我を免れましたが、もうひとりは大やけどを負い、翌日死亡しました。

この事故の2年後、灯台にハワイ最初の無線ビーコンが設置されました。その結果、ランプはアルコールから500W白熱球に変更されました。マカプウ灯台は1974年に自動化され、無線ビーコンはその前年に廃止されました。1984年にはだれかがレンズに穴を開ける事件が起き、1987年には灯台周辺に無許可で建物を建てて住み着く者が現れました。そのため灯台はその後に沿岸警備隊の管理となり、土地は国有地となりました。

*マカプウ岬の展望台からは、海に張り出すように白いデッキ(木道)が続いていますが、ここは灯台関係者の専用通路です。

東の海と灯台

東の海と灯台

アクセス

ワイキキから1時間に1本ほど出ているザ・バス(23番)に乗ります。乗車時間は50~60分ほどです。マカプウ岬に近づいたら「カラニアナオレ・ハイウェー+ハワイ・カイ・ゴルフ・カントリー」のバス停か、その先の「シーライフパーク」のバス停で降ります。トレイル入口近くにバス停はありませんので気をつけてください。いずれのバス停もトレイル入口まで1km強歩きます。
車の場合はH1に乗って東へ進みます。H1はやがて国道72号となります。ハナウマ湾を過ぎて火山灰が堆積した独特の縞模様を左右に見ながら6kmほど走ると、右側にマカプウ・ライトハウス・ロードが現れます。ここを右折せず直進するとほどなくマカプウ展望台が現れますが、そちらは岬の基部にあります。またこの展望台の駐車場から道を挟んだところにマカプウ・トム・トム・トレイルがあります。いずれの駐車場もあまり治安が良いとは言えません。通常はパトカーが常駐していますが、車には何も残さないようにするか、置いていきたいものは事前に外からは見えにくいところ(乗用車であればトランクなど)にしまっておきましょう。
日差しを遮る樹木はほとんどないので暑さ対策(帽子、サングラス、長袖、多めの水など)を忘れないようにしましょう。日差しが弱い早朝に出発するのも良い考えです。

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。