ハレアカラ国立公園の東南端にはキパフル・ビジターセンターがあります。今回は、公園内の川沿いに作られたピピワイ・トレイルの紹介です。ピピワイ川を遡り、ワイモク滝まで伸びるこのトレイルはしっかり整備されており、公園レンジャーによるガイドツアーも行われています。一人でも楽しめるトレイルではありますが、山道の単独行は避け、複数で歩きましょう。
ピピワイ・トレイルは、キパフルの観光ポイントとして知られるオヘオ渓谷を出発し、往復約6キロメートルを歩く人気コースです。出発してすぐに車道を渡って直進しますが、その前に右に折れて車道を少し進み、橋上からオヘオ渓谷の7つのプールを一望しましょう。すばらしい景観が待ち受けています。トレッキングの最後に楽しむという手もあります。橋からプールを眺めたあとにそこで泳ぐという人も少なくありません。しかし、トレイルを踏破した後では体力を消耗し、注意力が散漫になっているかもしれません。雨が降ると瞬く間に川は増水しますし、車の往来も多いので気をつけましょう。
さて、トレイルへ戻りましょう。最初はとくに注目するものもない景観に見えますが、この地域にしか分布しない固有の植物や稀少な植物もあります。植物図鑑を片手に歩くことをお勧めします。スタート地点から10分ほど歩くと、落差60メートルのマカヒク・フォールズが右手奥に見えます。少し前方へ進み出るとよりダイナミックな景観が見えるようなロケーションですが、フェンスの標識にあるようにかなり危険です。決して乗り越えてはいけません。
ここから小さな滝が連続し、滝壺には小さなプールがいくつか出現します。その日の天気がよく、午後に雨という情報がなければ、下山時に水浴び程度を楽しむのも良いでしょう。小さな橋を渡りながら川を縫うように登ります。やがて動物除けのゲートを通過し、巨大なバニヤンの木が現れます。周囲に何本も生えているようにみえるバニヤンですが、実は1本の木です。バニヤンは生長すると枝から気根を垂らし、それが地面に到達すると新しい幹の役割をします。このようにして周囲に広がる性質があります。
バニヤンの巨木を後にすると、ほどなく前方に竹林が広がります。この竹は日本のマダケだとレンジャーは言っていました。マウイ島の日本人移民が持ちこんだものとのこと。竹は次々に地下茎を伸ばし、今ではちょっとした森を形成しています。日中でも薄暗いこの竹林を歩くと、竹どうしが風に揺れて触れ合い、軽やかな音を立てます。その様子は日本の森と変わらないように思えます。
竹林が出現するあたりからは木道が伸び、最後は川の岩伝いに進みます。ほどなく、落差120メートルを誇るマウイ島最大のワイモク滝に到達します。ハワイ諸島ではどこでも見られる光景ですが、この滝壺でも多くの人が水浴びを楽しんでいます。しかし、滝の上からは間断なく砂粒から岩塊にいたるまで、色々なものが落下します。くれぐれも滝の直下には近寄らないようにしましょう。
トレイルはスタート周辺から滝壺に至るまで、グァバ、パッションフルーツ、マウンテンアップルなど、さまざまな果樹があります。その果実が何であるか、新鮮なのか、虫が食っていないかなどがわかるようであれば味わってみましょう。
植物好きには、果樹に勝る固有植物の宝庫であることもお伝えしておきます。その多くが絶滅危惧種であること、あるいはこの地域にわずかし分布していないことから、詳細な位置をお伝えすることはできませんが、植物図鑑を持参すれば大いに役立つでしょう。
帰りは来た道を辿ります。往復4時間を見ておけば十分です。トレッキング終了後、ハナ方面へ戻るまえに、ぜひチャールズ・リンドバーグの墓へ。小さなカトリック教会(パラパラホオマウ)の脇に墓地があり、海を見渡せるところにリンドバーグの墓はあります。
筆者プロフィール
- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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