皆様アローハ!

ハワイの州旗をじっとご覧になった事がありますか?アメリカと同じ色をしていますが、実は左のコーナーにユニオンジャックが入っています。ハワイのあちらこちらに、必ずアメリカの星条旗とともに掛けてありますが、この旗についていくつかこぼれ話があります。今日はハワイの旗についてお話いたしましょう。

ハワイ州旗「Ka Hae Hawaii」

ハワイ州旗「Ka Hae Hawaii」

現在のハワイ州の旗は1845年に作られました。ハワイでは州旗を「Ka Hae Hawaii」と呼びます。カメハメハIII世により、ハワイ王国の旗として決められました。カメハメハIII世は現在も使われている、コート・オブ・アーム(エンブレム)という言われるハワイ州のモットーも作られた王です。「Ua Mau Ke Ea Oka Aina Ika Pono」という「大地の生命は正義によって永続される」という意味があり、イオラニ宮殿のあちらこちらや、ハワイ島のフリヘエパレスにも掲げられています。

イオラニ宮殿のゲートに掛けられているハワイ州のモットー

イオラニ宮殿のゲートに掛けられているハワイ州のモットー

ハワイの州旗はアメリカ合衆国唯一、ユニオンジャックの入った州の旗となっています。これにはどういった意味合いがあるかですが、その始まりはカメハメハI世の時代にさかのぼります。一説によると1794年にイギリス人であり、カメハメハI世からとても信頼されていたジョン・バンクーバー氏がカメハメハI世に自国、イギリスの旗をプレゼントしたことに始まり、その旗を王家で掲げていたということです。1816年には海軍の役人、ジョージ・ベックリー氏にハワイ王国の旗を発注したところ、ユニオンジャックの入った旗が出来上がったということになります。イギリスの植民地でもなかったハワイ王国ですが、イギリスとの親交の深さを物語っているという説もあり、またイギリス艦隊は無敵だったということもあり、ハワイの港などにユニオンジャック入り旗がなびいていると、外国船が寄ってきて、カメハメハ王に取り入ろうとしたという説もあります。また、現在のハワイ州の旗にはこのときからのユニオンジャックと白、赤、青のライン8本は、ハワイの8諸島を表しています。

1886年時のイオラニ宮殿に飾られたカラカウア王のロイヤル・スタンダードの旗

1886年時のイオラニ宮殿に飾られたカラカウア王のロイヤル・スタンダードの旗

さて、ハワイ王国第7代の王、カラカウア王の時代にはロイヤル・スタンダードという、8本の白、赤、青のラインの中央に、コート・オブ・アームが入った旗が使われていました。バックグラウンドが白い旗は、カラカウア王自身の旗だったと言われています。

2014年11月16日に復活したロイヤル・スタンダードの旗

2014年11月16日に復活したロイヤル・スタンダードの旗

実は、1886年カラカウア王が50歳の誕生日のお祝いの日に、イオラニ宮殿に掲げられたのが、最後だと言われていました。ですが、ここ数年のリサーチで、やはりこのロイヤル・スタンダードという旗が本物だということが大学の教授やイオラニ宮殿の学芸員により、証明され、2014年11月16日のカラカウア王誕生日の際に、1886年以来100年以上の時を経て、イオラニ宮殿に飾られました。1891年1月にサンフランシスコで亡くなったカラカウア王の遺言で、この白いバックグランドのロイヤル・スタンダードはハワイ王国第8代のリリウオカラニ女王に受け継がれました。

白いバックグランドはカラカウア王のロイヤル・スタンダードの旗、白、赤、紺のラインがあるのはロイヤル・スタンダードの旗( Courtesy photo by State Archives and Iolani Palace)

白いバックグランドはカラカウア王のロイヤル・スタンダードの旗、白、赤、紺のラインがあるのはロイヤル・スタンダードの旗( Courtesy photo by State Archives and Iolani Palace)

今の州旗とロイヤル・スタンダードの旗の他にもう一種類、旗があります。それは歴史的な証明はなく、ハワイ州の旗に制定されたこともない旗ですが、ハワイアンの人達が信じている「Kanaka Maoli」というネイティブ・ハワイアンの旗です。色は赤、黄色、緑の三色で中央にはコート・オブ・アームにもある盾とハワイアンの伝統である航海に使われるパドルが2本、デザインされています。3色のうち黄色は王の象徴の色、赤はKonohiki = 酋長下の土地区分(アプアア)の頭。緑はMakaainana = 一般市民の事を指します。1843年には、イギリス人の海軍キャプテン、ロード・ジョージ・パウレッテにより、この旗の使用が禁止になったとも言われています。カメハメハI世がデザインを頼んでいた、ユニオンジャック入りの旗が、州の旗に制定されたのはこれから2年後の事でした。今では、ネイティブのハワイアンの人達の中では、この旗こそが本物だと主張している人も多く、車に付けたり、家の外に掲げたりとしている人が増えています。

ネイティブハワイアンの旗とされる「Kanaka Maoli」

ネイティブハワイアンの旗とされる「Kanaka Maoli」

ハワイに存在するキルトの一つにもフラッグキルトがあります。こちらのキルトは以前キルト・パラダイスでご紹介した「フラッグキルト」で説明していますが、ハワイの州旗が必ずデザインされています。中央にはコート・オブ・アームなどが色々な形でデザインされているものも多く、ハワイ王国が崩壊した1893年前後に作られた数が多かったようです。ハワイの人達の愛国心がこのようなキルトを作らせたと言われています。今でも王国時代を思う心から、とても大切にされています。

ハワイ州のモットーと州旗がデザインされているフラッグキルト(Courtesy photo by Emma’s Summer Palace)

ハワイ州のモットーと州旗がデザインされているフラッグキルト(Courtesy photo by Emma’s Summer Palace)

By アン

筆者プロフィール

藤原小百合アン
藤原小百合アン
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。

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