お暑うございます。さて、日本では昔から怪談は夏の風物詩です。怖い話を聞くと、ぞくぞくっ、として涼しくなる、とも言われていますが、昨今の酷暑では怪談くらいでは、なかなか涼しくなりませんね。ハワイにも不思議で、ちょっとゾクゾクする話が、たくさんあります。今回は、そんなハワイの不思議な話をご紹介します。

溶岩が広がる、ボルケーノ国立公園のデバステーション・トレイル

溶岩が広がる、ボルケーノ国立公園のデバステーション・トレイル

ハワイ島のキラウエア火山に住むと言われる、火の女神ペレは、美しく、気まぐれで、激しい性格の神様です。ペレに纏わる不思議な話は、ハワイ島では枚挙に暇がありません。中でも有名なのは、キラウエア火山の石の話です。真っ黒な溶岩が、あちらこちらにあるハワイ島。ボルケーノ国立公園には、火山活動で噴き上げられた、黒い溶岩がゴロゴロしています。その溶岩のかけらを「ハワイ島に行った記念に」などと持ち帰ると、ペレの怒りに触れて不吉なことがおきるそう・・・。というのも、ハワイ島の火山は全て、ペレのものだからです。ハワイ島の石を持ち帰るのは、ペレのものを無断で盗んだことになり、彼女の怒りが凶事を呼ぶと言われています。ペレを恐れた人々から、ボルケーノ国立公園やハワイ島の郵便局には、毎日の様に、持ち去られた溶岩が届いているそうです。

真っ黒な溶岩

真っ黒な溶岩

この返却される溶岩は、国立公園や郵便局のみなさんにとって、とても迷惑になっています。なかには、溶岩などのハワイ島の鉱物とは全く関係のない、ハワイで買ったお土産まで送られてくるそうです。防疫に力を入れているハワイでは、病原菌が付いているかもしれない、そしてホントにハワイ島のものかも分からない、送られてきた石を、簡単にハワイ島に戻すわけにはいきません。それに、この「ペレの呪い」については、20世紀半ばに作られた話である、とも言われています。観光客がハワイ島の溶岩を持ち去ることを、苦々しく思った人が言い出したとも、溶岩を持ち込んでバスを汚すことに、閉口した観光バス運転手が作った話とも言われていますが、定かではありません。作り話であったとしても、米国では国立公園内の鉱物の採集を禁止しています。それに海外から溶岩を日本に持ち込むのも、問題がありそうですね。何にしろ、ハワイ島の溶岩は持ち帰らないほうが良いようです。

『ペレの涙』と呼ばれる、丸い溶岩

『ペレの涙』と呼ばれる、丸い溶岩

ペレに纏わる話は、まだまだあります。ペレは若く美しい女性にも、お婆さんにも姿を変えるそうです。ペレは赤いムームーを着て、時には白い犬を連れて、人々の前に現れます。ペレが姿を現すのは、キラウエア火山が噴火をする予兆とされ、現れたペレに対して、親切にした人とそうでない人には、大きく運命が変わるそうです。1960年にハワイ島カポホで大噴火が起きた時に、カポホのクムカヒ灯台が難を逃れたのも、灯台守が噴火前に現れた老婆に親切にしたからだ、と言われています。また、夜間にサドルロードでヒッチハイクをしていた老婆を、無視した人の家は溶岩に破壊され、車に乗せてあげた人の家は溶岩が外れた、という話もあります(ちなみに、ハワイではヒッチハイクは違法です)。ところで、カラパナ近くに溶岩が流れていた頃、夜遅くに溶岩見物に行った帰り、ハイウェイを歩いている女性を、車中から見かけたことがあります。女性は、ヒッチハイクがしたい様子ではありませんでしたが、声をかけるべきなのか、と頭の中がぐるぐるしました。ぐるぐるしながらバックミラーごしに背後を見ると、真っ暗なプナのハイウェイには、もう人影は見つけられませんでした。

現在はビーコンのクムカヒ灯台。2018年の噴火でも溶岩から逃れたと聞いています

現在はビーコンのクムカヒ灯台。2018年の噴火でも溶岩から逃れたと聞いています

さて最後は、一番ドキドキする話かもしれません。ハワイではフアカイ・ポ、通称ナイト・マーチャーズと呼ばれる霊が、今でも恐れられています。ナイト・マーチャーズは、戦いで敗れて亡くなった、古代ハワイの戦士の魂と言われ、隊列を組んで行進しているそうです。彼らは、太鼓や法螺貝の音色と共に現れ、その足は地面から少し浮き上がっているそう。ナイト・マーチャーズが現れるのは、主に夜中ですが、亡くなった人の魂を連れに、昼間でも現れることがあると聞きます。そして、不運にもナイト・マーチャーズと出会った人の魂も、連れて行ってしまうそう・・・。もしハワイで夜中に太鼓の音が近づいて来たら、一目散にその場を去った方がいいようです。でも逃げ遅れてしまったら、最後の手段は、地面に平伏し、絶対に兵士たちを見ないようにしましょう。地面に伏せて助かった人の背中には、大きな足跡が残っていたそう・・・。「ナイト・マーチャーズが現れる」と知られる場所には、行かないようにしている人も多いそうです。

ナイト・マーチャーズが現れる、と言われる場所。近くには、ヘイアウも

ナイト・マーチャーズが現れる、と言われる場所。近くには、ヘイアウも

ハワイの不思議な話には、ハワイの自然や文化、それに私たち自身を守る警鐘が含まれているようにも感じます。夜中にペレがよく現れると言われる、ハワイ島のサドル・ロードは、街灯もなく夜間は霧が発生することが多いので、夜にドライブすることはオススメできません。ナイト・マーチャーズが現れると言われる場所には、ハワイの史跡などがあることが多く、例えば夜中にそこで騒いだりするのは、その場所を大切に思う人に失礼でしょう。夜遅くにウロウロしているのは、色々キケン、ということかもしれません。

ペレの目撃談が多い、ハワイ島のサドル・ロード。夜は真っ暗になります

ペレの目撃談が多い、ハワイ島のサドル・ロード。夜は真っ暗になります

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筆者プロフィール

NOPU
NOPU
ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/