皆様アローハ!

ハワイの赤十字を訪問してきました。赤十字のオフィスがダイアモンドヘッドの麓にあることを最近知り、見学させていただきました。今日はその様子をご紹介いたしましょう。

アメリカ赤十字ハワイの入り口のサイン

アメリカ赤十字ハワイの入り口のサイン

アメリカ赤十字は1881年にクララ・バートン(1821–1912)によりワシントンDCで設立されました。クララ・バートンはスイスのジュネーブで赤十字の存在を知り、1869年に渡欧した際、ドイツとフランスの戦争時に国際赤十字の業務に従事することとなり、赤十字という組織をアメリカに持ち帰ることにしたそうです。

1893年に王国が転覆し、ハワイはアメリカの共和国となり、1898年にアメリカの準州となりました。そんな中、赤十字がハワイで活動を始めたのは1898年のことでした。ハワイ王国最後のリリウオカラニ女王の姪であったプリンセス・カイウラニと300人の女性は1898年の米西戦争(スペインーアメリカ戦争)でフィリピンからの傷病兵に赤十字の人道支援や、社会的困難に苦しむ人々のためにボランティア活動を行ったと記録が残っています。

1917年リリウオカラニ女王は、設立されたばかりのアメリカ赤十字ハワイ支部に、飾られている赤十字の旗を贈呈されました。この旗は、女王がワシントン・プレイスに住まれてた間に忠実な協力者たちと共に制作されたものであり、「この旗は、人道の大義への私の温かく真心からの共感と、ハワイにおける愛国心あふれる女性たちの活動に対する揺るぎない信頼の表れだ」と伝えています。手縫いのこの旗はこれ以上腐敗しないように、今は大きなフレームに入れ、飾られています。この旗を間近に見ると、その時の女王の気持ちが伝わって来ます。貴重な旗ですね。この赤十字旗は、ハワイ州公文書館よりハワイ州赤十字社に恒久貸与されています。

その旗は第一次戦勝中にはイオラニ宮殿の上に掲げられました。赤十字の旗が国家の象徴的な建物に掲げられるのは非常に珍しく、女王の深い慈愛と支援の意志を示す重要な歴史的出来事となりました。今の旗の左には赤十字の旗が宮殿の上に掲げられた時の写真と、右には2017年にそこから100年を記念した式典の写真が飾られています。

リリウオカラニ女王が作られた旗が会議室の中に飾られています

リリウオカラニ女王が作られた旗が会議室の中に飾られています

宮殿の上に旗が掲げられた時の写真

宮殿の上に旗が掲げられた時の写真

宮殿の上に旗が掲げられた時の式典の様子

宮殿の上に旗が掲げられた時の式典の様子

そこから100周年を記念した式典の写真

そこから100周年を記念した式典の写真

イオラニ宮殿の上に赤十字の旗が掲げられた後は、玉座の間にその旗が掲げられ、ボランティアが包帯を巻く作業を行いました。また、1918年には着物を着た日本からの移民の人たちもミシンを使い、ボランティアをしていました。また、1917年にはマキキの消防隊の人たちがスカーフ、手袋、セーター、ソックスなどの編み物でボランティアしていた写真も残っています。この頃の消防隊の人たち、器用だったんですね。

王座の間でのボランティアの働く姿

王座の間でのボランティアの働く姿

1918年の着物姿のボランティアの人たち

1918年の着物姿のボランティアの人たち

1917年、消防隊員が編み物のボランティアをしている様子

1917年、消防隊員が編み物のボランティアをしている様子

今ではホノルル国際空港の名前になっているダニエル・K・イノウエも17歳で赤十字のボランティアを始め、応急処置のトレーニングを受け、1941年の12月7日の真珠湾攻撃後の負傷者の看護のボランティアも参加されたそうです。

17歳のダニエル・K・イノウエ氏

17歳のダニエル・K・イノウエ氏

赤十字がハワイに設立された直後、初の会員募集キャンペーンが行われました。1917年9月29日、ロイヤル・ハワイアン・バンドは特別に用意されたストリートカーに乗り込み、「There’ll be a Hot Time in the Old Town Tonight(古い町に熱い夜がやってくる)」を演奏しながらホノルルの街を巡りました。救急車がパレードし、ハワイアン・エレクトリック社は新しい会員が500人増えるたびに、大きな汽笛を1時間に数回鳴らしました。その日だけでオアフ島全人口の1/6に当たる16,000人以上が赤十字に入会したということです。ワシントン・プレイスのラナイに車椅子で座るリリウオカラニ女王の姿の写真もあり、彼女はパトロン会員として100ドルの小切手を寄付されました。今でもイオラニ宮殿の幽閉の間にはリリウオカラニ女王が幽閉時から作り始めた「クィーンズ・キルト」と言われるクレイジーキルトも展示され、女王の手先の器用さが伝わります

キャンペーンの時のキングス・ストリートを行進している写真

キャンペーンの時のキングス・ストリートを行進している写真

リリウオカラニ女王の当時の姿

リリウオカラニ女王の当時の姿

イオラニ宮殿幽閉の間に飾られている「クィーンズ・キルト」

イオラニ宮殿幽閉の間に飾られている「クィーンズ・キルト」

館内には戦争時、ハワイでの災害時のボランティアの手伝い、当時、ボランティアの人が来ていた制服なども展示されています。一応一般公開はされていますが、あらかじめ、赤十字ハワイ支部に連絡をし、予約をしていると、中を見せてくださることになっています。アメリカ赤十字は全世界で募金、献血、災害救護、救急法講習、国際的な人道支援を行っています。大規模な自然災害や、人工的な災害である住宅火災でも活動をしています。日頃、ボランティアを募る活動や、トレーニングなども随時され、活動は休みなく行われています。この活動のおかげで世の中の皆さんが平和に安全に生活できていると言っても過言ではないです。今回館内を案内してくださったMaryさん、ありがとうございました。ハワイ王国、赤十字、ハワイの歴史の認識を深く知ることができました。

当時の制服などがたくさん陳列されています。

当時の制服などがたくさん陳列されています。

アン

アメリカ赤十字ハワイ支部

4155 Diamond Head Rd, Honolulu, HI 96816

筆者プロフィール

藤原小百合アン
藤原小百合アン
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。

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