この記事は2021年6月17日に掲載しました。2024年のホノルルのキング・カメハメハ・セレブレーション・フローラル・パレードは6月8日に実施される予定です。ハワイ各地のイベントの詳細は下記サイト(英語)にてご確認ください。
https://sfca.hawaii.gov/resources/king-kamehameha-celebration-commission/

 

アローハ!

6月11日、ハワイ州ではカメハメハデーの祝日です。カメハメハデーはハワイ王国を建国したカメハメハ1世をお祝いするための日ですが、カメハメハ1世のお誕生日ではありません。カメハメハ5世の時代にハワイの文化歴史を忘れないために、この日が作られたと言われています。そのお祝いには必ずパウライダーと言われる馬に乗り登場する女性たちがパレードに参加しています。

今日はそのパウライダーについてご紹介いたしましょう。

パウライダー

パウライダー

ハワイのカメハメハデーという祝日が作られたのは1871年のカメハメハ5世の時代でした。そして実際に祝日と定められたのは1872年と言われています。当時もカメハメハデーはお祭り事である色々なイベントが開催されたそうです。そしてその後王国は崩壊し、アメリカの50州目となってからも続きダウンタウンのカメハメハ1世像に長いレイをかけるセレモニーを始め、パレード、カピオラニ公園での競馬やポロの競技などが開催されました。

現在でもカメハメハデーのパラードは続いています。カメハメハデーのパレードでは華やかなパウライダーと呼ばれる女性が乗った馬が登場し、フローラルパレードと呼ばれるように花で飾った山車が続きます。イオラニ宮殿からワイキキまでのパレードは圧巻です。もともと王国と馬との関係はカメハメハ1世の時代から始まっています。残念ながら去年、今年とすべての大きなイベントは中止になってしまいましたが、来年開催されることを今から楽しみにします。

カメハメハ1世像にかけられた無数の素敵なレイ

カメハメハ1世像にかけられた無数の素敵なレイ

昔のハワイ諸島ではポリネシアから持ち込まれた動物が数種類はいましたが、牛や馬はいませんでした。キャプテンクック一行がハワイに上陸したのが1778年。その時に同乗していたジョージ・バンクーバーはその後、数度に渡り、ハワイに渡航しその間、数頭のヤギやカモなども持ち込み始め、1794年にはハワイ島に5頭の雌牛と1頭の雄牛を持ち込み、カメハメハ1世に献上しました。そこからハワイ島の牧場文化が始ました。その後1803年に馬がハワイに持ち込まれ、1830年頃にはハワイでも乗馬ができるようになり、カメハメハ3世はメキシコからいわゆるカウボーイを連れて来て、ハワイの人々に乗馬を教え、カウボーイとして調教し、野生の牛をコントロールしたと言われています。ハワイではカウボーイの事をパニオロと言いますが、これもスペイン語が語源と言われています。

パウライダーとはハワイの特殊な乗馬姿の女性を指します。このパウライダーという乗馬は、ハワイではショー的要素が多くあります。馬にまたがるのではなく、横鞍と言われる乗り方で、中世のヨーロッパで生まれた乗り方です。この時代陸での移動手段で馬を使うことが多くなりました。そして王族の女性たちも馬に乗る機会が増えたということで、このようなパウライダーのような形が普段の生活に取り込まれたと言われています。

パウ(Pa'u)はハワイ語でスカートの事ですが、スカートとして作られたものではなく、1枚のサロンをパンツ状に結び、スカートパンツにして、馬に乗るというのが主流でした。王族の女性達がこのパウを着て乗馬をすることから始められたと言います。綺麗なドレスで乗馬する際、馬が蹴る土などがつかないためのガードだったという話もあります。ボタンやファスナーはなく、ククイナッツの実などを内側に入れ、スカートを固定していたようです。

昔のパウライダーの姿 Photo Credit: Hawaii State Archives

昔のパウライダーの姿
Photo Credit: Hawaii State Archives

1875年にイザベラバードが書いたハワイの紀行本の中にもパウライダーや乗馬している男女の話も載っています。

ハワイ島も歴史的な牧場がいくつかある中、ワイメアにはアナ牧場があります。アナ牧場のヒストリック・ホームには、持ち主であったアナの大きな肖像画が掛けられていますが、パウライダーの伝統を広めるために、アナはハワイ以外の場所でもパウスカートのはき方や乗馬などをパレードで披露したり、デモンストレーションをする事を続けたそうです。アナは1995年に95歳で亡くなりましたが、85歳くらいまでは乗馬をし、一生乗馬を楽しみ、伝統を守った人生だったと言われています。

アナのパウライダー姿の肖像画

アナのパウライダー姿の肖像画

アナの晩年のパウラーダー姿

アナの晩年のパウラーダー姿

現在のパレードもパウライダーの女性が先頭を切り、カラフルな様子をみることができます。ハワイ諸島にはそれぞれ色や花が指定されています。その指定された色をすべて身に纏ったカラフルなパウライダーを見ることができるのも、カメハメハデーの楽しみです。ぜひ来年には復活したパレードを見たいものですね。。

アン

 

筆者プロフィール

藤原小百合アン
藤原小百合アン
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。

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