イオラニ宮殿では王家のドレスを再プロデュース!
イオラニ宮殿では2016年からイオラニ宮殿復興のプロジェクトの1つとして、王家の女性達、カピオラニ王妃とリリウオカラニ女王が当時身につけていたドレスの複製を始めました。ハワイアンキルトとの関係性ですが、生地がハワイに入り、ドレスやハワイアンキルトが作られるようになったということから、生地を使った製品ということで、今日は少しハワイアンキルトから外れてハワイ王家のドレスについてご紹介しましょう。
この王家の複製ドレスですが、有名デパートとのコラボレーションもしたので、しばらくはデパートに展示されていましたが、現在は4枚のドレスが完成し、期間限定でイオラニ宮殿の1階王座の間に飾られています。
イオラニ宮殿は、ハワイ島ヒロ在住、パリでヴィクトリアンやエドワーディアンファッションの仕事をしたことがあるIris Viacrusis (アイリス・ヴィアクルーシス)というデザイナーに、ドレス複製プロジェクトを任せることにしました。彼はたくさんのボランティアとともに400時間以上のリサーチをし、4枚のマスターピースを作り上げています。あと数枚このプロジェクトにより、ドレスが作られる計画です。
彼らが最初に手掛けたのは、カピオラニ王妃の「レイ・フル・マヌ」というドレスです。1883年にカピオラニ王妃に贈られ、戴冠式の時に身につけたと言われています。また、1887年、イギリス王国ヴィクトリア女王の即位50周年の式典時にも持参し、ハワイ王朝の象徴である鳥の羽のレイとウエスタンのファッションがミックスされた見事なドレスということで当時もとても話題になりました。
このドレスの素材は、光沢のある平織り生地のシルクタフタです。鳥の羽というのは王家の象徴であり、オリジナルドレスのレイは「オオ」というすでに絶滅してしまった鳥の羽が使われました。また、その羽は王家に伝わるケープからリサイクルされた羽と言うことです。
ヴィクトリア女王はハワイ王国の王夫妻を招待したときに、女性達は何かハワイらしいものを身にまとうようにと注文しました。
カラカウア王は世界外交中で多忙な為、カピオラニ王妃のおともには、次の王家継承権を持っていた、王の妹、リリウオカラニ王女が同行しました。(まだ女王ではなかったため、王女としています)
複製品の鳥の羽のレイは4本のレイを付けられており、そのうち3本は2009年から2010年にかけて、イオラニ宮殿の地下ギャラリーに展示されていたもので、ビショップ博物館から借りたレイです。複製品の羽はグースの羽に色を付けていますが、綺麗な黄色が複製ドレスを引き立たせています。
2枚目のドレスはリリウオカラニ女王が来ていたオーストリッチのドレスです。女王の大好きだった薄いパープル(ライラック)の色をしています。白黒の写真ではドレスの色が白かアイボリーに見えますが、今回のリサーチの結果、内側の色を特定でき、もとはライラック色をしていたと判明したそうです。この複製に使われたオーストリッチの羽は200枚、サンフランシスコから取り寄せた羽です。またトレーンは取り外すことが可能で、場所やセレモニーにより、付けたり外したりできました。たとえば、公式の場では付け、夜のディナーやパーティには取り外されました。また、ドレスにはダスト・ラッフルという裾が汚くなるのを防ぐ生地が付けられていました。オリジナルのこのドレスは、ハワイ王国における、最後の公式なドレスと言われており、王国最後の女王として君臨したリリウオカラニ女王が身につけた歴史的なドレスです。ビショップ博物館の歴史書には、1893年の国会などにも着ていたと記されています。
3枚目はカピオラニ王妃のクジャクの羽のドレスです。
このドレスもレイ・フル・マヌ同様1887年のヴィクトリア女王の即位50周年に持って行きました。また、他の祝い事の時にも着ていたということです。
ハワイ王国の象徴でもある鳥の羽を使ったドレスですが、このドレスはニューヨークのロイヤルドレスを作るB. Altman & Co.にオーダーしました。カピオラニ王妃は、ドレスの色について「アズーア色=青色は私の名前と同じ色」と伝え、素材はブルーのベルベットが使われています。また、何かハワイらしい演出をというヴィクトリア女王の意向により、くじゃくの羽が4000羽使われたといいます。1887年のニューヨーク・タイムズにも書いてありますが、ニューヨークのクジャクの羽はドレス用には足りない。しかしながらハワイでクジャクはペットなので、ハワイでも羽が手に入らない。とクジャクの羽のドレス作りが難しかったことを記しています。ドレスのトレーンの長さは3.6m、幅は2.7mありました。トレーンは外すこともできました。ベルベットの他に、モアレという織物も使われ、とてもエレガントなドレスでした。
4枚目はリリウオカラニ女王のリボン・ドレスです。
カピオラニ王妃とリリウオカラニ王女がイギリスのヴィクトリア女王の即位50周年に出席したときにこのドレスを着ています。大きなリボンが後ろに付いているロイヤルドレスで、この後女王になってからも、お気に入りとなり、色々な公式の場でも着ています。
当時、昼間の公式の場では帽子にパラソル、夜にはダイヤモンドをアクセサリーとして身につけたと記されています。
当時のリリウオカラニ王女の髪の毛には、ロンドンで購入したダイヤモンドが数百、目にはルビーを使用したチョウチョの形のアクセサリーが飾られています。これは髪飾りではなく、ブローチなのですが、とても気に入って見つけてすぐに購入したとのことです。このチョウチョのブローチは今でもイオラニ宮殿の地下に展示してあります。
後にリリウオカラニ女王は、王女時代、女王時代に集めた鳥の羽のレイ(レイ・フル)やダイヤモンド入りのロイヤルアクセサリーなどの贅沢品を、自分の死後には処分し、孤児のための施設を作ってほしいという遺書を残しました。現在でもリリウオカラニ・トラストとして、ハワイの子供達に貢献しています。
4枚のドレスは、当時のサイズも忠実に再現しています。19世紀の女性達のドレスの下には、必ずがっちりとした、コルセットを着けていました。ハワイではクジラの骨で作られたコルセットだったと言われています。
リリウオカラニ女王のオーストリッチのドレスはウエストが31インチ(78cm)、カピオラニ王妃のクジャクのドレスサイズは16~18(アメリカサイズ)であり、ウエストは31(78cm)インチあったとのことです(ビショップコレクションに記録があります)。
ドレスよりもコルセットや下着の方が重かったことで、1回に3時間くらいしか身に付けたりはしなかったようです。また、食事の時には着なかったと文献には残っています。
以上のような公式用のドレスやその他のドレスも、19世紀の王家の女性達にとっては、体を隠すためということよりも、ステータスを見せるために着ていました。1883年のカラカウア王戴冠式の時には王族の女性達はヨーロッパと親交も深かった事より、ほぼ税印、西洋のドレスを身につけています。
最後に王家の女性達の中で、黒いドレスをよくを着ていた女性が2人いました。一人はカメハメハ1世の王妃の一人であり、力のあったカアフマヌ王妃。そしてもう一人はハワイ王国の最後の女王となったリリウオカラニ女王。王国崩壊後は、大好きなライラック色を辞め、黒のドレスしか着ませんでした。これには王国崩壊へ対しての心の抗議を黒で表現していたとも言われています。
この4枚の複製ドレスは期間限定でイオラニ宮殿の王座の間に飾ってありますので、お時間があれば、是非見に来て下さいね!私は日本出張以外、毎週火曜日の11時30分からの日本語ガイドツアーをやらせていただいています!
By アン
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筆者プロフィール
- アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。
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