ボルケーノ・ハウスから望むキラウエア・カルデラの雄大な風景は、ハワイ島でもっとも観光客で賑わう場所と言って良いでしょう。しかし、ここが出発点となるトレイルはあまり注目を浴びません。トレイルを歩けば景色だけでなく、火山が見せるさまざまな表情や、そこに生息する動植物を観察できます。今回は数あるトレイルのなかで、唯一キラウエア・カルデラに降り立つことのできるアースクエイク・トレイルを紹介します。

最初は車道の跡を歩く

最初は車道の跡を歩く

アースクエイク・トレイルはキラウエア・カルデラの縁を巡る短いトレイルですが、火山活動のエネルギーがもたらすパワーを目の当たりにできます。
ボルケーノ・ハウスの裏手には展望台があり、ここを通るクレーター・リム・トレイルが出発点です。キラウエア・カルデラに向かってを左手(南)へ歩きはじめましょう。歩きはじめて間もなく廃道となった車道に出ます。ここは1975年に起きた大地震で大きくひびが入りました。その後、修復作業を行いましたが、1983年に再び起きた地震でひび割れが拡大したため、国立公園はこの車道を廃棄しました。車の来ない舗装道路という、少し異質な風景を歩き続けると、ときどき左右に地割れが出現します。危険な箇所は柵で囲われていますが、柵にもたれかかると倒壊する危険があるので気をつけましょう。アースクエイク(地震)トレイルという名前は、道路の地割れに由来します。

展望台から見たキラウエア・カルデラとハレマウマウ・クレーター

展望台から見たキラウエア・カルデラとハレマウマウ・クレーター

やがて前方に「バイロン・レッジ展望台」という当時の標識が現れます。ループ上になっている道を右へ進むと、かつての展望台に到着します。ここからキラウエア・カルデラとハレマウマウの噴煙を眺められます。ここまでスタート地点から20分ほどです。ピクニックテーブルが据えられているので、写真撮影をしたり、野鳥を観察するのも良いでしょう。早朝がとくにお勧めです。

展望台を離れ、先へ進むと左の道(元の道)と再び合流します。しばらく進むと前方が柵でブロックされたところに行きあたります。ここから先は地盤が緩いため、立ち入り禁止となっています。指示に従って左へ折れ、林のなかを通って崩壊部分を迂回します。ほどなく右へ折れて元の道に戻ります。その先にキラウエア・イキ・トレイル(左手)との合流地点があります。舗装道を横切り、右に大きく折り返してキラウエア・イキ・トレイルに入りましょう。

左右に迫る柵

左右に迫る柵

そのまま先へ進み、緩やかに下っていくと、10分ほどで再び右に分岐点が現れます。左に伸びるキラウエア・イキ・トレイルに別れを告げ、右の道を進みましょう。次の三叉路はバイロン・レッジ・トレイルとの合流点となります。ここも右に折れ、左にキラウエア・カルデラを見ながらバイロン・レッジ・トレイルを北へ進みます。途中、巨岩がそこかしこに転がる崩落地帯に出ます。背丈よりはるかに大きな岩のすき間を縫うように進みます。これらの岩はどれも立方体に近い形をしていることに気づきます。熱い溶岩が冷え固まるとき、節理と言って、岩石の弱い部分に亀裂が入り、立方体のようにひび割れたものです。

やがてジグザグに下って溶岩の大空間が広がるキラウエア・カルデラに降り立ちます。ここまでスタート地点から、40~50分といったところです。カルデラの先には遠くにハレマウマウ・クレーターから噴煙が上がるのが見えます。このガスは有毒性のため、周囲はすべて立ち入り禁止になっているのですが、ここだけが例外として開放されています。

摂理で割れた玄武岩の巨岩が転がる

節理で割れた玄武岩の巨岩が転がる

ケルン(石積み)を目印に10分ほどカルデラ内の端を歩くと、前方に森が近づき、その手前に三叉路が現れます。左右の道はともにハレマウマウ・トレイルです。前方には進入禁止の看板がありますが、そこから先に入ってはいけません。ここでは右へ進み、カルデラの壁を登ります。カルデラの壁面には柱状の節理が見え、その下に先ほど通ってきた巨岩の転がる一帯が見えます。

登りきったところで再び三叉路が現れます。左がイリアヒ・トレイルで、右はハレマウマウ・トレイルです。ここは右へ進みます。すぐに現れる三叉路で再びクレーター・リム・トレイルに合流します。ここを左へ曲がるとビジターセンターへ、右へ曲がると、ほどなく出発点のボルケーノ・ハウスが見えてきます。所要時間はおよそ2時間弱です。

立ち入り禁止の標識とハレマウマウの噴煙

立ち入り禁止の標識とハレマウマウの噴煙

 

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。