ハワイが開国し、移民が行われはじめるとさまざまな鳥が連れて来られました。そのなかには観賞用だけでなく、意図的に自然に放たれたりしたものもあります。メジロのように有害指定こそされていませんが、在来の鳥に悪影響を与えるため、対策が検討されている種(しゅ)もあります。今回は2回に分け、ハワイの町でよく見かける鳥をお伝えします。
Red-vented bulbul / シリアカヒヨドリ / Pycnonotus cafer
住宅地区や郊外で見られます。黒に近い暗灰色で、島によって異なりますが、チョウショウバトやカバイロハッカなどと一緒にいることが多いです。雑食ということと、人になれていることがその理由でしょう。日本では近縁にヒヨドリがいます。頭部の冠毛が特徴です。アジアの熱帯地域原産で、ハワイではオアフ島でよく見られます。他にハワイ島やモロカイ島、カウアイ島にもわずかな個体が生息しています。全長19~22cmで、雌雄同色です。ハワイに導入されたのは1960年代とされます。『世界の侵略的外来種ワースト100』のひとつであり、拡散が危ぶまれています。
White eye / メジロ / Zosterops japonicus
ハワイでは都会から森のなかまであらゆるところに侵出しています。全長は10~12cmで雌雄同色で、目の周りに白い縁取りがあるのが特徴です。ハワイではニイハウ島とカホオラヴェ島を除く島々に生息します。日本では保護鳥として知られるメジロですが、ハワイでは在来種に悪影響を与えるため有害指定されています。ハワイには1920年代から30年代にかけてオアフ島やハワイ島に持ち込まれたのが最初とされます。
Saffron Finch / キンノジコ / Sicalis flaveola
住宅街でよく見られます。南アフリカの原産で、ハワイには今世紀に入ってから確認されました。ハワイ島に多く、カウアイ島、マウイ島、オアフ島でも生息数が増えています。全長は14~18cm。雄は羽根を除き全体がオレンジ色をしていますが、雌は全体に明るい灰茶色です。
Java sparrow / ブンチョウ / Padda oryzivora
都市部から郊外まで広く分布します。つねに群れで移動し、地面の草の種や虫を食べるほか、レストランの残飯を食べたりします。インドネシアの原産で、全長は14~15cmです。19世紀半ばにはすでにハワイに導入され、オアフ島をはじめマウイ島、ハワイ島などに生息しています。
Nutmeg mannikin / シマキンパラ / Lonchura punctulata
ハワイでは主要6島の海岸近くから森の奥まで各地で観察できます。19世紀半ばに原産地である東南アジアから導入されました。全長は10~11cm。雌雄同色です。都市部に生息しますが、人の多いところには飛来しません。
Yellow-fronted Canary / キマユカナリア / Crithagra mozambica
全長11~13cm。アフリカが原産です。雄は羽根を除き全体に黄色味を帯びていますが、雌は少しくすんだ色をしています。雌雄ともに目の上に黄色いラインがあり、英名や和名の由来となっています。ハワイには1960年代に目撃されていますが、いつ導入されたかについては定かではありません。オアフ島をはじめ、ハワイ島やモロカイ島に生息しています。都市部でも見られますが、高地や森のなかでも見られます。
Common waxbill / オナガカエデチョウ / Estrilda astrild
アフリカ原産のフィンチの仲間です。全長は約10cmで雌雄同色です。ハワイではもっとも小型の鳥のひとつです。赤味を帯びた灰色の羽毛を持ちますが、細かな黒いラインが特徴です尾は黒色、目の周りとクチバシは濃いピンク色で、オス、メスともに同色です。1970年代の後半にオアフ島で最初に確認されました。オアフ島を中心に主要4島で分布が確認されています。街中から森林地帯まで次第にその勢力範囲を広げています。主に草の種子を食べます。
Northern cardinal / ショウジョウコウカンチョウ / Cardinalis cardinalis
全長は21~23㎝で、雄はクチバシの周りを除き赤色、雌は褐色~淡褐色です。この鳥の学名と英名の由来は、枢機卿の名に由来しています。枢機卿は真紅のマントをまとうため、赤色の代名詞として用いられました。また米大リーグのセントルイス・カージナルスのユニフォームにはこの鳥が描かれています。ハワイではコウカンチョウと同時期の1929年に導入され、諸島全域に広がりはじめています。
Red-crested cardinal / コウカンチョウ / Paroaria coronata
全長19~21㎝で、南米中部の原産です。雄は頭部が赤色、雌は褐色~淡褐色です。本種の学名と英名の由来は、枢機卿の名に由来しています。枢機卿は真紅のマントをまとうため、赤色の代名詞として用いられました。また米大リーグのセントルイス・カージナルスのユニフォームにはこの鳥が描かれています。ハワイではコウカンチョウと同時期の1929年に導入され、諸島全域に広がりはじめています。オアフ島をはじめ、カウアイ島、モロカイ島、ラナイ島に分布します。
Yellow-billed Cardinal / キバシコウカンチョウ / Paroaria capitata
全長は17~18cm、雌雄同色です。背と喉が黒色、頭部は赤色、胸から腹にかけては白色です。クチバシの黄色いことが英名の由来です。1930年代にコナとカヴァイハエに持ち込まれたという記録がありますが、本格的な導入は1975年で、ハワイ島のコナに導入されました。その後次第に生息域を広げ、現在はサウスポイントやヒロでも見られます。草の種を主食とします。コウカンチョウに似ますが、冠毛がない点が大きな違いです。
筆者プロフィール

- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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