野生生物保護区

カウアイ島の北東部に位置するキラウエア岬(Kilauea Point)は野生生物保護区に指定されています。

ネーネー(ハワイガン)の番(つがい)

ネーネー(ハワイガン)の番(つがい)

 

野生生物保護区は全米に550あり、米国魚類野生生物局が管轄しています。このうち、ハワイ諸島には9つあり、カウアイ島には3つあります。キラウエア岬が保護区に指定されたのは1985年のことで、海鳥の営巣地区保護が主な目的です。国立の野生保護区に制定されたのは1979年で、その後、1988年には指定地域をクレーターヒルやモコレア岬にまで拡大され、約88ヘクタールの地域が指定されています。今日、保護区には年間50万人もの人々が訪れます。

イヴァ(オオグンカンドリ)

イヴァ(オオグンカンドリ)

コアエ・ケア(シラオネッタイチョウ)

コアエ・ケア(シラオネッタイチョウ)

コアエ・ウラ(アカオネッタイチョウ)

コアエ・ウラ(アカオネッタイチョウ)

 

キラウエア岬は今から1万5千年ほど前に噴火した(カウアイ島の)キラウエア火山の跡です。そのときの火口壁は、今日、落差60mほどの、海に面する絶壁として残されています。キラウエア岬では数種類の海鳥を観察できますが、生息数はハワイ諸島最大です。

生息する海生ほ乳類はナイア(ハシナガイルカ)やハワイ固有の哺乳類であるイーリオ・ホロ・イ・カ・ウアウア(ハワイモンクアザラシ)など、海鳥ではア(アカアシカツオドリ)やウアウカニ(オナガミズナギドリ)、イヴァ(オオグンカンドリ)がよく見られます。この他にも細長い赤い尾を持つコアエウラ(アカオネッタイチョウ)やネーネー(ハワイガン)などが見られます。

ウアウカニ(オナガミズナギドリ)

ウアウカニ(オナガミズナギドリ)

ア(アカアシカツオドリ)

ア(アカアシカツオドリ)

 

モーリー(コアホウドリ)

モーリー(コアホウドリ)

キラウエア岬野生生物保護区の活動は、野鳥を捕食するマングースなどから岬一帯を守るため、保護区全域にフェンスを張りめぐらせることから始まりました。とくにネーネーに関しては、卵を直接地面に産むため過去に野生種が絶滅してしまった過去があるため、手厚く保護されています。ネーネーを除く海鳥たちの大半はこの岬周辺で子育てをし、子が巣立ちを迎えると、北西ハワイ諸島など、他の島へ戻ります。

捕食されるのは海鳥だけとは限りません。イリマやアココ、アヘアヘアなどのハワイ固有植物も保護と繁殖も重要なプログラムのひとつです。灯台に向かって右手下の海岸にはハワイモンクアザラシやホヌ(アオウミガメ)が体を暖めにやって来ることもあります。冬季にはモーリー(コアホウドリ)が子作りに飛来し、海ではザトウクジラの姿を見ることができるようになります。これらすべての活動はレンジャーのほか、150名に及ぶボランティアによって続けられています。

1913年当時の灯台

1913年当時の灯台

灯台内部

灯台内部

キラウエア灯台

1900 年代初頭、米国政府は航行の便宜を図るため、カウアイ島への灯台設置を検討しました。西からハワイ諸島を訪れる船にとり、カウアイ島は最初の陸地だったからです。その結果、キラウエア岬が選ばれました。半島の標高は54メートルで、高さと位置は理想的でした。

建設は 1912 年に開始され、1913年に完成しました。灯台は鉄筋コンクリート製で、今日では一般的な構造ですが、当時としては最新の建築技術でした。レンズはフランスから輸入し、その他の金属部品はオハイオ州で製造されました。

1927年になると、それまで主要な移動手段であった船は素早い移動手段である飛行機へと移り変わりました。キラウエア岬灯台は飛来する飛行機にとっても絶好の位置にありました。この年、メインランドからホノルルに向かっていた飛行機が道に迷った際、キラウエア岬灯台の光を発見し、自分たちがカウアイ島上空にいることに気づきました。当時は有視界飛行だったため、飛行機は灯台の周囲を旋回しながら夜明けを待ち、その後ホノルル空港に無事着陸しました。

キラウエア灯台

キラウエア灯台

1941年の日本軍による真珠湾攻撃後、灯台は戦争が終わるまで使用を止めることになりました。その代わりとして、近くのクレーターに要塞を築き、光の代わりにレーダー測定器を設置しました。戦後、住み込みの灯台守による運営は廃止され、ハワイ諸島の灯台は無人運営されることになりました。

その後も船舶にとっては重要な存在だったキラウエア岬灯台でしたが、やがて無人の自動ビーコンに置き換えられ、灯台の光は必要不可欠な存在ではなくなりました。1976 年、沿岸警備隊はキラウエア岬灯台の光を消し、この灯台の有視界運営は終了することになりました。その3年後、アメリカ合衆国はキラウエア岬灯台を歴史建築物に登録しました。

キラウエア岬灯台は2013年に設立100周年を迎え、傷みの激しい照明器具の修復作業を行いました。同時に灯台の正式名称を合衆国上院議員だったダニエル・K・イノウエキラウエア岬灯台としました。

一般に灯台は強烈な光線を周囲に発します。キラウエア岬灯台の場合は、海面から64メートルの高さにあることも手伝い、最長40km離れた位置から光を確認することができます。

アクセス

リフエからはノース・クヒオ・ハイウエー(56号線)を北上し、キラウエア・タウンの表示を右折し、コロ・ロードに入ります。次に左折してキラウエア・ロードに入り3kmほど進むと保護区に到着します。

キラウエア岬野生生物保護区
電話:808-828-1413
入場料:5ドル(16歳未満は無料)
開園時間:10:00~16:00

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。