ネイバー・アイランドの小さな町をご紹介する7回目は、ワイメアです。ワイメアと言う地名を聞いて、多くの方はオアフ島のノースショアにあるワイメアを思い浮かべるかもしれません。あるいは、ハワイ島にある牧場が広がるワイメアかも。でも今回ご紹介するのは、カウアイ島のワイメア。カウアイ島の西にある小さな町です。
カウアイ島は、とても緑が濃い島です。緑深い景色を楽しみながら、西へ西へとドライブして行くと、次第に辺りは赤茶けた感じになってきます。道路も赤茶色、道沿いの家々や対向車も、なんだかうっすら赤茶色。赤茶色の正体は、カウアイ島を覆う赤土です。乾燥したワイメアでは、赤い土埃が舞いやすいのかもしれません。何しろ「ワイメア」の意味は「赤い水」です。町の入り口にあるワイメア川は、だいたいいつも赤土で濁っていますが、上流のワイメア渓谷に大雨が降ると、更に深い赤茶色の水が流れています。
ハワイの中でもワイメアは、特別な歴史を持つ町ではないでしょうか。
ワイメアに初めて定住したのは、マルケサス諸島から来た人々だと言われています。この、マルケサス諸島からハワイへ来た人々は、しばしばメネフネ伝説として語られています。メネフネとは、ハワイの伝説に登場する小さな人々です。以前「メネフネを探そう!」と言う回でもご紹介しましたが、ワイメアにはメネフネが作ったと言われる水路があります。これは、マルケサス諸島から来た人々が作ったものかもしれませんね。
その後、ハワイにはタヒチから人々が移住し、ワイメアにもタヒチをルーツとするハワイアンが住んでいました。そして1778年、ジェームズ・クックがワイメアに上陸し、初めて欧州人とハワイの人々が会うこととなりました。
ジェームズ・クックは彼が亡くなったハワイ島との関係が有名ですが、ワイメアに初上陸した事については、それほど知られていような気がします。ワイメア川を渡ってすぐ、銀行の前の小さなスペースにジェームズ・クックの像があります。気づかずに素通りしてしまいそうな場所です。以前、ワイメア川の近くに上陸を記念するプレートも見つけたことがありますが、今もあるのかな・・・とても小さなプレートでした。
19世紀初頭になって、当時のカウアイ島の王様が、ロシア帝国から来た人物にロシアとの保護条約を約束しました。ハワイは既にカメハメハ大王によって統治されていたので、勝手に約束したわけです。ワイメア川の手前には、エリザベス要塞と呼ばれるロシアの要塞が作られました。かなり大きな要塞だったようですが、今ではただの広場のような場所になっています。
近代になってワイメアは、サトウキビ産業が盛んになりました。現在、ワイメアだけでなくカウアイ島には稼働している製糖工場はありません。ワイメアのメインストリートを散策していると、製糖工場の廃墟を見つける事ができます。もう動く事がない製糖工場やプランテーションの名残りがある街並み、ワイメアはオールド・ハワイの雰囲気に包まれた町です。
サトウキビ産業に従事する労働者の中には、日系人も多かったようです。町の中心にあるビッグ・セーブは、日系一世のカワカミさんが創業したスーパー・マーケットです。今もカウアイ島では5店舗が営業していますが、ワイメアが1号店。最近、閉店してしまったイシハラ・マーケットも、日系人が創業のワイメアのシンボルとも言えるスーパー・マーケットでした。ビッグ・セーブは現在、タイムズ・スーパー・マーケットの傘下になっていますが、店の名前はそのまま営業しています。
古い建物が多いワイメアで、ひときわ目立つアール・デコ調の建物はワイメア・シアターです。20世紀後半に閉鎖された後、1992年にカウアイ島を直撃したハリケーン・イニキによって大きなダメージを受けました。取り壊しも検討されたそうですが、修復されて復活、今も現役の映画館です。
カウアイ島から南西にはニイハウ島があります。禁断の島として知られるニイハウ島は、ロビンソン家が所有する、ハワイでも特異な私有の島です。外部からのニイハウ島への渡航は原則禁じられていますが、島民が他の島を訪問することは自由なようです。ワイメアのメインストリート沿いには、ニイハウ出身者が多く集うと聞くワイメア・ハワイアン・チャーチがあります。この教会に集まる人たちは、美声の持ち主が多いことでも知られています。日曜の朝に教会の前を通りかかった時、美しいハワイ語の讃美歌が聞こえてきました。
ワイメアの海は、ワイメア川から流れ出た赤土で濁っています。濁った海はサメの被害が多いとも言われていますが、ワイメア川の近くにあるサーフスポットは地元のサーファーに人気の場所です。ワイメア近くのハイウェイ沿いに、車がたくさん停まっていると「ああ、今日は波がいいんだな」と思います。
海が濁っていることもあり、ワイメアの海で泳ぐ人はあまり見かけません。ワイメアは乾燥していてとても暑い事が多いのですが、ビーチの人気は無いようです。ワイメア湾にかかる桟橋も、人影はまばら。島の反対側にある、ハナレイ桟橋のような賑わいはありません。でも、夕暮れのワイメア桟橋は、とても美しい。夕陽に染まる海の向こうに、ニイハウ島の影もぼんやり見えました。
筆者プロフィール
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ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/
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