雨の楽園へ行こう！・その２＜カウアイ島＞

トレッキング天国、カウアイ島には様々なトレッキング・コースがあります。中でもコケエ州立公園にあるアラカイ・スワンプ・トレイル（以下、アラカイ・トレイル）は、北西の海岸線を歩くカララウ・トレイルと並ぶ、カウアイ島を代表するトレイルでしょう。
だいぶ以前にアラカイ・トレイルをご紹介した事がありますが、その後も度々このトレイルを歩きました。というのも何度挑戦しても、アラカイ・トレイルの終点、キロハナ展望台は霧に包まれていたからです。晴れていれば島の北側にあるハナレイ湾を望む絶景が見えるはずですが、何しろアラカイ湿原は「雨の楽園」。果たしてキロハナ展望台からハナレイ湾は見えるのでしょうか。

ピヘア・トレイルから出発

まずはコケエ州立公園を登る道路の終点、プウオキラ展望台からアラカイ湿原を目指します。以前は入場無料だったコケエ州立公園ですが、現在は入場料と駐車料金が必要です。プウオキラ展望台でカララウ渓谷の絶景を眺めた後は、さっそくトレッキングをスタートしましょう。
プウオキラ展望台から延びる赤土の尾根道は、ピヘア・トレイルと言う名前が付いています。実はアラカイ・トレイルは、まだまだ先です。その昔、カウアイ島を一周する道路建設が計画されましたが、あまりにもカウアイの山々が急峻なため中止になりました。ピヘア・トレイルの始めの方は、その道路建設が頓挫した部分です。雨が降った後などは赤土が滑りやすい時もありますが、崖から見える渓谷を眺めながら楽しく歩く事ができるでしょう。この辺りを歩いていると「それほど大変なトレイルじゃないな」と侮りがちです・・・ああ（タメイキ）。

赤土の滑りやすい傾斜道

次第に道幅が狭くなり、トレイルを囲む木々が鬱蒼としてくると、トレイルの状態が悪くなってきます。赤土の道はドロドロが多くなり、崖をよじのぼるように進まなくてはいけない場所もあります。私の経験では、だいたいこの辺りで靴は赤土まみれになります。軍手を持ってくればよかった、と思うのもこの辺りです。出発地プウオキラ展望台からとは違った角度から、カララウ渓谷を見渡せるピヘア展望台へは約２km。まだ終点まで半分も歩いていません。美しい景色に一息ついた後は「かなり大変なトレイルだった・・」と少し後悔しながら更に１kmほど進むと、このルートの中間点アラカイ十字路に到着です。

アラカイ十字路を曲がってアラカイ・スワンプ・トレイルへ

アラカイ十字路は、ピヘア・トレイルとアラカイ・トレイルとの交差点です。この角を曲がるとトレイルの名前が、いよいよアラカイ・トレイルに変わります。
ピヘア・トレイルの難所が滑りやすい赤土の悪路なら、アラカイ・トレイルの一番の難所は、長い長い階段でしょう。往路は主に下りなので、本当に大変なのは復路です。でも階段の周囲は、カウアイ島の深い森。ハワイ固有種の植物や鳥たちをたくさん見つけられる場所なので、復路は階段を登りながら植物や鳥を探すと、大変さも少し緩和できるかもしれません。とりあえず復路の事は考えないようにして、長い長い階段を下りると、小川が流れています。この小川を渡り、森を抜ければ、やっとアラカイ湿原です。

アラカイ・スワンプ・トレイルの長い長い階段

小川を渡る

アラカイ湿原には膝丈ほどのオヒア・レフアが一面に広がり、あちこちに沼が点在しています。湿地の上には木道が敷かれているし、ほぼ平坦でとても歩きやすい道です。森の中と違い視界も開けていて、開放的な感じがします。今までの道のりに比べると、まさに楽園のようなトレイルです。
でもアラカイ湿原があるカウアイ北西部の山々は、世界でも有数の雨が多い場所。レインギアを着て、雨の中を歩いた事もあります。出発地のプウオキラ展望台が快晴だったのに、アラカイ湿原は霧の中、という事もありました。
それでもアラカイ湿原を歩くのは、とても楽しい時間です。そしてこの場所を歩く度に、湿原の中に木道を敷いた方々は、なんと偉いことか、と思います。なにしろ、かつて木道がなかった頃にアラカイ湿原で道に迷い、未だに行方不明の人もいるそうです。
カメハメハ４世の妃であったエマ女王も、アラカイ湿原を訪れています。女王の一行は、当時は途中まで馬で、その後は徒歩で進みました。しかし厳しい道のりで日が暮れてしまい、湿原でエマ女王は一夜を明かす事になったそうです。毎年コケエでは、エマ女王がアラカイ湿原を訪れた事を記念するフェスティバルも開催されています。

雨のアラカイ湿原

アラカイ十字路から約３km、ようやく終点のキロハナ展望台に到着です。
日頃の行いのせいか、季節のせいか（ちらりとハナレイ湾が見えることもありましたが）、キロハナ展望台はいつも雲の中でした。やっとハナレイ湾をはっきり見る事ができたのは、５回目の挑戦の時です。
カウアイ島の北、ワイニハ渓谷の崖の上に作られたキロハナ展望台は、２畳ほどの板場。今までここから見える景色は、ほとんど白い霧だったのですが、雲が開けて見ると怖いほど急な崖の上に自分が立っていることが分かりました。切り立った崖を見ていると、膝の裏がぞわぞわしてくるほどです。馬蹄形のハナレイ湾が遠くに見えます。美しいハナレイ湾を見ていると、じんわりと達成感が込み上げてきました。心なしか、今までよりも帰路は楽に歩く事ができました。

キロハナ展望台からの絶景。海岸線の馬蹄形の湾がハナレイ湾

注）2025年2月現在、ワイメア・キャニオン・ドライブのカララウ展望台からプウオキラ展望台まで、道路の補修工事のため車両での通行ができません。工事中はカララウ展望台からプウオキラ展望台まで、徒歩で行く必要があります。

筆者プロフィール

NOPU

ハワイは２０年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU：http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/