小さな町へ行こう！・ホノカア＜ハワイ島＞

ハワイのネイバーアイランドには、オールドハワイの面影を残す小さな町がいくつもあります。その小さな町をご紹介する６回目は、ハワイ島のホノカアです。

「ハワイの小さな町に行ってみたい」と言われたら、初めに思い浮かぶのがホノカアかもしれません。ホノカアは、ハワイの小さな町を代表するような所です。ホノカアがあるのは、ハワイ島の北東。ハイウェイから外れて海側へと坂を下った先に、ホノカアのメイン・ストリートはあります。
四つ角の小さなスーパーマーケットから図書館まで、ゆっくりメイン・ストリートを歩いても１０分ほどです。道沿いには、西部劇に出てきそうな木造の建物が並んでいます。ハワイの小さな町には、このタイプの木造の建物が多いのですが、多くは２０世紀の始めに建てられた、築１００年前後の建物です。老朽化が進んで壊れたり、空き家のまま荒れていく建物もあるなかで、ホノカアは昔ながらの景観を維持しているように思います。

ホノカアのメイン・ストリートをぶらぶら歩いて、古い建物を眺めるのは楽しい時間。建物の多くは、１９２０年から３０年に建てられたものです。
２０世紀の始め、ホノカアからヒロまで続くハマクア・コーストは、サトウキビ産業が盛んでした。日系移民も多く、サトウキビ・プランテーションで重労働に従事したそうです。ハマクア・コーストには、サトウキビ産業によってできた小さな町が点在していますが、ホノカアはとても栄え、ハワイ島ではヒロに次ぐ二番目に大きな町でした。
ホノカアのメイン・ストリートに並ぶ建物には、日本人名が付けられているものも多く、日系移民の歴史を感じることができます。なかでも、１９３０年に建てられたホノカア・ピープルズ・シアターは、町のランド・マークになっています。

映画化もされた「ホノカア・ボーイ」の舞台、ホノカア・ピープルズ・シアターを訪ねた方もいらっしゃるでしょう。
ホノカア・ピープルズ・シアターは、日系一世のタニモト・ハツゾウ氏によって建設されました。タニモト氏は、ハワイ島内にいくつもの劇場を建てています。ホノムにあるホノム・シアター、カイルア・コナの南のカイナリウにあるアロハ・シアターなどが、タニモト氏の建てた劇場です。
ホノカア・ピープルズ・シアターが建てられた頃は、ハワイには何百もの劇場があり、人々の娯楽の中心だった事が伺えます。しかし時代が経るに従い、ハワイの劇場は次々に閉館していきました。
ホノカア・ピープルズ・シアターも閉館されてしまいましたが、所有者だったタニモト夫人（タニモト・ハツゾウ氏のご子息の奥様）から受け継いだ、ドクター・キーニーによって１９９２年に再開しました。「ホノカア・ボーイ」の筆者の吉田玲雄氏が、ホノカア・ピープルズ・シアターをお手伝いされていたのは、ドクター・キーニーが所有者になった後ですね。

ホノカアを訪れる時、アンティーク・ショップのホノカア・トレーディング・カンパニーは、外せない場所です。ハワイで中古品を扱う店をいろいろ見てきましたが、ホノカア・トレーディング・カンパニーは、とてもいい店です。
様々な品物が、良心的な価格で売られています。整理された店内は、アンティーク・ショップにありがちな「物がとにかく積まれている」こともなく、掘り出し物も見つけやすいです。
とても状態の良いファイヤーキングのコレクションを見つけて、購入したことがありますが「この間、日本人のコレクターが、ほとんど買っていったのよ」と、店主のグレースさんが話してくれました。
グレースさんと会うのも、彼女の猫たちと遊ばせてもらうのも、ホノカア・トレーディング・カンパニーへ行く楽しみでした。現在はグレースさんのお嬢さんが、お店を継いでいらっしゃるようです。

さてホノカアには、もう一つ外せない場所があります。それはメイン・ストリートではなく、ハイウェイ沿いにある店です、と言えば、ハワイ島が好きな方はすぐにお分かりになるでしょう。
５０年を超える歴史を持つホノカアの老舗店、テックス・ドライブインはマラサダで有名な店です。ハマクア・コーストをドライブしていて「ちょっと小腹がすいたな」という時に、ぜひ立ち寄りたいのがテックス・ドライブイン。「おなかがいっぱい」という時でも、つい寄ってしまうのですが。四角いマラサダは、外はカリカリ、中はモチモチ。あっという間に食べてしまいます。
お店のイートイン・スペースでアツアツのマラサダを食べるのがオススメですが、テイクアウトして近くのホノカア・パークで食べた時のことをよく思い出します。緑の芝生が広がる野球場には、平日の朝は誰もいません。ホノカアの朝は、時間が止まったかのように静かでした。「ああ、ハワイに来たなあ」と、指に付いたマラサダのお砂糖を舐めながら思ったものです。