ハワイ島でハイキングと言えば、やはりボルケーノ国立公園は外せません。ボルケーノ国立公園は広く、たくさんのトレイルがあります。その中でも今回は、荒涼とした砂漠を歩いて、古代ハワイアンが残した遺跡を見に行くトレイルをご紹介します。

ボルケーノ国立公園の南西には、広大なカウ砂漠があります。カウ「砂漠」という名前が付いていますが、実際は砂漠気候と呼ぶには雨が多い場所です。この地域に降る雨は、溶岩で覆われた大地に浸透してしまい地表に残りにくいうえ、キラウエア火山から出た火山ガスの影響で強い酸性雨になってしまうため、植物が育つには難しい環境となっています。それで植物の少ない、砂漠のような風景が広がる土地になった、というわけです。
カウ砂漠には、ヒイナ・パリという絶景の断層まで続く長い長いトレイルがあるのですが、今回ご紹介するのは、このカウ・デザート・トレイルの始めの1.2kmほどの区間です。

荒涼としたカウ砂漠を歩く

荒涼としたカウ砂漠を歩く

カウ・デザート・トレイルの起点は、ボルケーノ国立公園の入場ゲートの外にあります。入場ゲートを出てハイウェイを南へ15kmほど。ハイウェイから見える景色は、深い森から林へ、そして視界が開けた荒地に変わってきました。
カウ・デザート・トレイルの入り口があるのは、ハイウェイの海側です。直前にある、カウ・デザート・トレイルの起点を示す小さな看板が見えたら、駐車スペースを見つけて停車する用意を始めましょう。ハイウェイの幅を広げただけの駐車スペースは、通り過ぎてしまいがちなので、注意してくださいね。

カウ・デザート・トレイルの入り口

カウ・デザート・トレイルの入り口

ハイウェイからすぐにカウ・デザート・トレイルに入ります。ボルケーノ国立公園の入場ゲートからかなり遠い場所ですが、ここも国立公園の中。ボルケーノ国立公園は、とても広いのです。
さて、トレイルの始めの方は、細いけれど整備された歩きやすい道が続いています。トレイルの周囲も灌木や草が茂っていて、砂漠という感じではありません。トレイルを進んでいくと、次第に灌木がなくなってきました。所々で頑張って立っているのは、オヒアの木です。それもだんだん少なくなり、木の大きさも小さくなってきました。腰の高さほどのオヒアの木にも、赤いレフアの花が咲いているのが、なんだか健気な感じです。

砂漠に咲くオヒア・レフア

砂漠に咲くオヒア・レフア

いつの間にか景色は、溶岩に覆われた大地に変わっています。滑らかなパホエホエ溶岩や、ゴツゴツしたアア溶岩が続くトレイルを進んでいくと、砂地が現れ出しました。溶岩の上には人の歩いた跡がなんとなく見え、砂地には小石が並べてありますが、簡単に道を外れてしまいそうです。殺風景と言えなくもありませんが、振り返るとマウナ・ロアが長い裾野を広げている姿がよく見えます。青い空を背景に、うっすらオレンジ色にみえるマウナ・ロアの山肌がきれいです。見渡す限り何もない場所ですが、ぽつんと建物が見えてきました。今回の目的地、フット・プリントに到着です。

フット・プリントの東屋

フット・プリントの東屋

フット・プリント、つまり「足跡」を見に来ました。フット・プリントは大地に残された、古代ハワイアンの足跡です。
フット・プリントは1919年に、カウ砂漠の砂の中から偶然に発見されました。長い間この足跡は、キラウエア火山の大爆発に巻き込まれた兵士たちのものである、と言われていました。1790年、カメハメハ軍との戦闘から帰還の途中であった、カウ地区の部族の兵士たちが、火山の大爆発によって生じた高熱の火砕サージ(火山灰の混じった爆風)に襲われました。多くの兵士が亡くなったこの出来事は、ケ・オネ・ヘレレイ(「落ちる砂」という意味)と呼ばれて伝承されています。
その後の調査で、足跡の中には女性や子供と思われるものもあり、1790年の爆発以前のものと思われる足跡もあることが分かりました。現在ではフット・プリントは、古くからハワイアンがこの場所で暮らしてきたことを示しているもの、とされています。

フット・プリント。写真は、ケースがない時のもの

フット・プリント。写真は、ケースがない時のもの

さて、肝心のフット・プリントは、東屋のような建物の中でケースに覆われています。以前はこのケースはなかったので、砂がたまって足跡はよく分かりませんでした。現在は・・・現在も足跡は、よく分かりません。ケースのおかげで砂はありませんが、やっぱりどれが足跡かは見分けられませんでした。20世紀半ば頃に、フット・プリントを保護するための作られたガラスケースが原因で、フット・プリントは損傷してしまったのだそうです。
その後、ケースは取り外されていましたが、現在フット・プリントは新しいケースの中にあります。何度も言いますが、どれがフットプリントかはよく分からないので、東屋の中に展示されているレプリカを見て「こんな感じだったのかな」と思うしかありません。東屋の近くでもフット・プリントを見つけることができるそうなので、辺りをうろうろしてみましたが、見つけられませんでした。

フット・プリントのレプリカ

フット・プリントのレプリカ

私は見つけられませんでしたが、周囲の砂の状況によっては保存状態のよいフット・プリントを見つけることができると聞きます。「古代ハワイアンの足跡を探すぞ!」という方は、風のない日を選んで行かれることをオススメします。風が強い時には、砂嵐の中を歩く辛いハイキングになってしまうかもしれません。日差しを遮るものがないので、帽子や飲み水もお忘れなく。

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筆者プロフィール

NOPU
NOPU
ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/