136年前の戴冠式のガウンとローブの複製ボランティアに!

イオラニ宮殿のボランティアドーセント(ガイド)になり、丸6年が経ちました。5年ごとに賞状をいただけるのですが、次の10年目を指して頑張りたいと思います。相変わらず毎週火曜日11時30分からの日本語ガイドをしております。イオラニ宮殿の前は通ったことある方も多いと思いますが、是非館内のガイド付きツアーにご参加してみてください。色々な発見があると思います。

そのイオラニ宮殿はハワイ王国第7代目のカラカウア王が1882年に建てた宮殿です。その翌年、王の戴冠式が執り行われました。その時にお妃であるカピオラニ王妃が来ていたガウンとローブについて今日はお話したいと思います。

 

音楽の間にある戴冠式の時のカピオラニ王妃の肖像画

当時の戴冠式の白黒のカピオラニ王妃の写真

数年前にカピオラニ王妃と最後の女王であり、カラカウア王の妹リリウオカラ女王のドレス複製プロジェクトが始まりました。詳しいことは2017年にご紹介した王家のドレスをご覧ください。(https://www.pacificresorts.co.jp/kawaraban/quilt/royal_dresses/

その後のプロジェクトでありますが、約2年前よりこの新しい戴冠式のガウン(ドレス)とローブとの複製プロジェクトが始まりました。今回のデザイナーは前回とは違いキニ・ザモラさんになりました。彼はアメリカの番組の「パーフェクト・ランウェイ」という番組で一躍有名になったローカルデザイナーです。彼は2年間、宮殿やビショップ博物館などでリサーチを重ねて来ました。今の時代のファッションでデザイナーですから、リサーチをしてどのような生地を使っていたのか、どのような装飾が施されていたのかを丁寧に調べることはとても大切です。ハワイの歴史を理解する上で難しいことは、なかなか書物が残っていないということです。昔の新聞のアーカイブから、新聞記者がどのような形容をしていたかなどを探し出し、写真や肖像画などガウンやローブの詳細を探し出さなくてはなりません。彼がインタビューで話していたのは、肖像画は唯一カラーで残された証拠であり、白黒の写真からはなかなか材料なども分かりにくかったということでした。写真や肖像画より今のテクノロジーを駆使し、デジタル化してベースを作ったそうです。その結果、ガウンの生地は白のシルクサテン、ローブは赤いベルベットだったことが判明しました。高価な生地を実際に使い、テストするのは大変なので、モスリンなどの安い生地をまずは使い、ローブやガウンのドレープの部分などを実際に作ってみて、いろいろ研究を重ねたとのことでした。

ザモラ氏のムードボード

スケッチされたガウンとローブの絵

ガウンやローブの細部に装飾が施されていますが、それは金色の刺繍、レース、フリンジだったと言われます。刺繍の部分はパラパライというシダの一種(ハワイアンキルトのパターンにもよく使われる)であり、またローブの裾の部分はアーミンと言われた中世期時代の王のマントの内側などに使われたファーも金のシダの刺繍も使われていました。現在、同じ材料は使えないので、それに似たものを代用したと言います。ローブは当時のホロクというフォーマルなドレスだったと言われ、胸には金のシダの刺繍がたくさん施されていました。ザモラさんは生地や装飾などが用意された後、いよいよ手縫いでの刺繍の作業の時に、私たちイオラニ宮殿のボランティアを招待してくださいました。複製品の作成に参加できるなんてこんな素敵な機会はありませんよね。キルターであり、イオラニ宮殿のボランティアである私には願ってもない体験です。ただ、そのボランティアの日が1日だけ、しかも私のガイド担当の火曜日だったため、1時間強しかお手伝いができなかったのが残念でした。でもしっかりと金のパラパライの刺繍を手縫いして赤のベルベットのローブの上に縫い付けて来ました。

赤いベルベットのローブに金のシダの刺繍を縫い付ける手作業

作業中の記念の1枚

シダをベルベットに縫い付けるのは結構大変

私は赤いローブの担当でしたが、白のシルクサテンのガウンに金のシダの刺繍を縫い付ける作業の人たちもいました。こちらもなかなか大変な細かい仕事です。でも皆さんとても楽しそうに作業していました。こんな素敵なボランティアをできること、誇りに思いますね。

白いシルクサテンのローブにシダの刺繍

ドレスは刺繍してからの仕立てです

当時もこのような手作業で作られたガウンとローブ。素晴らしく完成しました。戴冠式だった136年前の2月12日はどのような気持ちでカピオラニ王妃は着られたのでしょうね。ハワイ王国の素晴らしい歴史の一部を垣間見た気がします。この2枚はまずは4月12日から5日間アラモアナ・センターのデパートで展示され、その後5月6日より、イオラニ宮殿の王座の間にて展示が始まるとのことです。1887年5月6日は、ワシントンDCでクリーブランド大統領にカピオラニ王妃とリリウオカラニ王女(当時)が招かれたハワイ王国としても記念の日でした。王妃はこの戴冠式のガウンを身にまとって出席されたということです。イオラニ宮殿のハイライトの一つになるに違いありません。このようなものを毎週見ることができる私たちボランティアは本当にラッキーとしか言いようがありませんね。

完成したローブとガウン(フロント)

完成したローブとガウン(バック)

皆さまも機会があれば是非ご覧になってくださいね。

By アン

☆5月15日(水曜)から21日(火曜)まで博多阪急「ユトリエ」でのハワイアンキルト展示、販売、ワークショップ開催が決まりました。伝統的なハワイアンキルトを見ていただくチャンスです!是非ご来場ください!

☆電子ブックが発売!

https://www.amazon.co.jp/dp/B0721195V5/ref=zg_bs_2292799051_f_9?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=WZSDX1N0A2Y4W80K1H3D

☆インスタグラム・フォローしてください!

https://www.instagram.com/annes_hawaiian_quilt

★facebookも是非ご覧ください!

https://www.facebook.com/pages/Annes-Hawaiian-Quilt/681572441861121?hc_location=stream

 

 

Follow me!

筆者プロフィール

藤原小百合アン
藤原小百合アン
アーミッシュキルトの盛んなアメリカ・オハイオ州の高校に留学中にアメリカン・パッチワークを習得。その後ハワイに移住し、マウイ島のハナ・マウイ・ホテルで出会ったハワイアンキルトのベッドカバーに一目惚れをし、ハワイアンキルトを始める。2001年9月11日、ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の犠牲者とその家族への追悼キルト、『千羽鶴 フレンドシップキルト』を全国のキルターとともに完成させ、2009年9月、9.11メモリアルに寄贈。2010年スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)にてキルト展を開催。2011年7月、ハワイで毎年開催される「キルトハワイ」において、オリジナルデザインの「マノアの森」キルトがグランプリ受賞。2012年7月、電子本「キルトストーリー」を発売。2012年9月、スパリゾートハワイアンズへ、フラガール・フレンドシップキルトを寄贈。2013年11月より、イオラニ宮殿の日本語ドーセントのボランティアを開始。2021年7月には誠文堂新光社より「ハワイアンキルト パターンとステッチの魅力」の増補改訂版を発売。ハワイ、日本での展示会やレッスンなど、伝統的なハワイアンキルトを広げるため、日々奔走中。ハワイ在住34年目。