先月に引き続き、ハワイ諸島のうち都会や集落、その近郊で見られる鳥を紹介します。これらの鳥は世界各地からハワイへ移住した人が持ち込んだものが大半です。主に観賞用ですが、害虫などの駆除という場合もありました。しかし事故、あるいは意図的に自然に放たれたものも少なくありません。今回は前回に紹介しきれなかった鳥をお伝えします。この中には、渡り鳥、海鳥、山の鳥など、人が訪れる前からいる在来種や往来する鳥は含まれていません。
African silverbill / アフリカギンバシ / Euodice cantans(カエデチョウ科)
アフリカのサバンナ気候地帯原産で、全長は10~12cm。頭部から背中と翼にかけては淡褐色~灰褐色、尾羽は黒く腹部は白、雌雄同色です。写真ではわかりにくいですが、羽根に横縞を入れているかのように規則的な濃淡が背中を中心にあります。ハワイでの最初の記録は1970年代で、乾燥地域や水場で見かけます。餌は基本的には植物の種子です。写真はハワイ島のサウスポイント近くです。わりと人を恐れないので、遭遇する機会があればしっかり観察できる可能性が高いです。
Black-rumped Waxbill / カエデチョウ / Estrilda troglodytes(カエデチョウ科)
アフリカとカナリア諸島原産で、全長は9~11cm。全体に灰褐色で,目の周りとクチバシは鮮やかな赤色です。尾羽は黒いですが先端に白羽があります。腹部はピンク色で脚は黒褐色です。アフリカギンバシよりはっきりとした濃くて間隔の狭い横縞ががあります。雌雄同色です。ホノルルであればコオラウ山系の麓辺りから海辺に近いカピオラニ公園までどこでも見られます。餌は植物の種子や昆虫です。写真はホノルルのカパフルです。
Chestnut munia / キンパラ / Lonchura atricapilla(カエデチョウ科)
南アジア~ネパール~インド北西部が原産で、全長11~13cm。雌雄同色です。全体に黒に近い暗褐色で、背中にオレンジ色のマントを羽織り、胸元でその先端を止めたように見えます。灰青色のクチバシも目立ちます。公園の芝生などに群れで飛来し、植物の種子を食べます。写真はオアフ島のホオマルヒア植物園です。
Nutmeg mannikin / シマキンパラ(アミハラ) / Lonchura punctulata(カエデチョウ科)
インド~中国南部~東南アジア台湾の原産で全長は10~11cm。雌雄同色です。全体に茶褐色ですが、腹部は淡褐色、名前の通り体に白い斑があり、腹部は濃い波状の縞があります。餌は基本的に植物の種子です。写真はホノルルのフォスター植物園近くです。
House sparrow / イエスズメ / Passer domesticus(スズメ科)
ニュージーランドの原産で、体長は全長14~16cm、スズメより少し大型です。雌雄で体色が異なり、雄はスズメに似ますが、頭に帽子を被ったような濃い部分があります。雌は全体的に淡褐色で、目の上に眉状の明るい横縞があるのが見分けのポイントです。鳴き声はスズメに似ています。写真はマウイ島カフルイ郊外です。
Rose ringed parakeet / ホンセイインコ / Psittacula krameri(オウム科)
原産地はアフリカ中部~パキスタン~インド~ミャンマーで全長は41cm。雌雄はほぼ同色です。体は黄緑色で、尾は青緑色、クチバシは赤色。オスはクチバシから首の後ろにかけて黒い環状の帯があります。ハワイではかご抜け鳥が野生化し、オアフ島とカウアイ島に多く生息します。ワイキキでも日常的に目にします。導入されたのは1930年代で、ハワイで最初に定着したインコとして知られます。乾燥した潅木の林や果樹園などに見られ、果実や草の種、穀物などを食べます。写真はワイキキのクヒオ・ビーチ近くです。
Rock Pigeon / カワラバト(≒ドバト) / Columba livia(ハト科)
ヨーロッパ~中央アジア~北アフリカが原産、全長は30~35cm。基本的には雌雄同色ですが、さまざまな色合いと模様があるので、色での識別はあまり意味がないように思えます。カワラバトはドバトと同一視されますが、狭義には家畜化されたものをドバトと言います。雑食ですが、昆虫や、人が与えるものも食べます。写真は白色のカワラバト、カウアイ島のルマハイ川に近い平地での観察です。
Spotted dove / カノコバト / Streptopelia chinensis(ハト科)
インド~スリランカ~中国南部~東南アジアの原産で、全長は28~32cm。雌雄同色です。全体に灰色か灰褐色で、首の部分は朱色、そのすぐ下の黒い部分には白い斑点があるので判別は簡単です。(ただし幼鳥に斑点はありません。)主要6島に生息していて、森の奥から住宅街まで生活範囲はかなり広いのが特徴です。餌は植物の種子、穀物、昆虫などです。写真はホノルルのリリウオカラニ植物園です。
Zebra dove / チョウショウバト / Geopelia striata(ハト科)
マレー半島~ボルネオ~オーストラリアの原産で、全長は20~24cm。雌雄同色です。ハワイで見られる他のハト類より小型ですが、その声は訪れる人はみな聞き覚えがあるはずです。首から上は淡灰色、その下は灰褐色で黒と白の縞模様があります。腹部は赤味を帯び、尾羽には白い斑があります。町中のどこでも見られる鳥で、草や雑草の種子が主食ですが、人が与えるパンなども食べます。写真はハワイ島ヒロの郊外です。
Western meadowlark / ニシマキバドリ / Sturnella neglecta(ムクドリモドキ科)
北米中部~メキシコ北部の原産で、全長約23~28cm。雌雄同色です。腹部から喉にかけて黄色で、胸に黒い模様が入ります。背中は黒と薄褐色の縞模様で、長いクチバシが特徴です。草原や水田、牧場などに生息します。餌は昆虫です。写真はカウアイ島のハナレイ水田です。
White eye / メジロ / Zosterops japonicus(メジロ科)
インドネシア~日本を含む東南アジアの原産で、体長11~13cm。雌雄同色です。腹部から尻ぶかけて淡黄色ですが、そのほか全体が緑色を帯びるなかで、和名や英名の由来となっているように、目の周囲の白色が目立ちます。ハワイには害虫駆除の名目で導入されましたが、街中から森の奥まで拡散します。花の蜜や果実などを好むため、場所によってはハワイミツスイなど、在来種の生息を脅かします。英名はJapanese White-eyeとも言います。写真はハワイ島のラウパホエホエです。
Yellow-fronted Canary / キマユカナリア / Crithagra mozambica(アトリ科)
サハラ砂漠以南のアフリカ原産で、全長は10~13cm。雌雄は似た色をしていますが、雄の方が黄色が鮮やかです。頭部は灰緑色で、名前のとおり眉は黄色です。胸部から腹部胸も黄色で、背中は灰緑色。町の郊外や農耕地に生息します。主な餌は植物の種子です。カナリアの名が付きますが、別系統の鳥です。ハワイへの導入は1960年代とされます。写真はハワイ島ヒロ市内。
筆者プロフィール

- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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