ハワイ島をはじめとするハワイ諸島はいずれも地球内部のマグマが噴出して作り上げた火山島です。噴き出したマグマは溶岩と呼ばれ、とくにハワイ島では流れ出した溶岩の様子を手軽に観察できます。
ハワイ火山国立公園を訪れると、壮大な規模の溶岩平原を間近にできますが、そのイメージは黒一色の世界というところでしょうか。しかし、注意深く観察するとさまざまな形状や色合いの溶岩があることに気づきます。今回はそのなかからよく見られるものを紹介します。
縄状溶岩
溶岩が縄(ロープ)のようによじれて冷え固まったもの。溶岩流の末端にできやすく、おもにパーホエホエ溶岩に見られます。
軽石(パミス)
噴出した溶岩が急速に冷やされるとき、内部のガスが放出されて多孔質(海綿状)となった岩石です。文字通り軽くて脆く、水に浮く場合があります。
ペレの涙
長径5~10mmほどの火山弾の一種です。噴出した際に尾を引き、涙型となるのが名前(通称)の由来です。
ペレの髪の毛
溶岩が風に飛ばされて糸のように細長く伸び、髪の毛のような形状となったものです。長いものは1m近くにもなります。溶岩大地の風の吹きだまりに集まります。
レティキュライト
溶岩の気泡が連結した、スポンジに似た形状の結晶です。指の力で簡単に崩れるほど脆く、軽いです。
スコリア
溶岩の燃えかすです。多量に空気を取り込み、酸化して赤味を帯びたものが多く見られます。見た目よりも軽く脆いのが特徴です。
カンラン石(フォルステライト)
マグマが地上に噴出して結晶化(晶出)するとできるのがカンラン石です。そのなかの一部は、最初は無色透明(または白色)ですが、マグネシウム成分のうちの10%前後が鉄に置き換わると黄緑からオリーブ色に変化します。
火山弾(噴出物のうち小さなもの)
噴石丘の堆積物のうちの破砕物で、おもに銅が主成分です。非常に硬く、石で叩くと10円硬貨のような金属音がします。
火山弾(噴出物のうち大きなもの)
溶岩の噴出口からは、ときとして固まったままの溶岩を噴き上げることがあります。そのなかには直径が2mを超すものもあります。
石膏(せっこう)
硫酸カルシウム(CaSO4)を主成分とする鉱物で、バサニ石、石膏、硬石膏の総称です。火山洞窟の天井に垂れ下がる溶岩鍾乳や壁面に付着することがあります。ジプサムとも呼ばれます。
酸化物が付着した石膏
酸化した鉄分が石膏に付着し、赤く染まることがあります。火山性の洞窟などで見られます。
硫黄の結晶
硫黄(サルファー)ガスの噴出口などに付着し、成長してレモンイエローをした岩石のようになります。
ガラス成分
溶岩中のガラス成分が溶岩の表面で結晶化したものです。
溶岩樹形(外観)
樹木を取りこんだまま固まった溶岩では、内部に木の跡が鋳型となって残る場合があり、これを溶岩樹型と呼びます。大きな規模になると、内部に人が入ることもできます。
溶岩樹形(内部)
溶岩に取り囲まれた木の燃え跡が鋳型になったもの。固まった溶岩の表面には幹の表皮模様が残る場合もあります。
噴火口(プウ・オー・オー火口)
キラウエア火山に連なる噴火口のひとつで、1960年代から活発に溶岩を噴き出しています。昨年、ハワイ火山観測所は、プウ・オー・オーの溶岩噴出はピークを過ぎたと報告しました。
噴火口(ハレマウマウ火口)
キラウエア・カルデラ内にあるクレーターで、地底から噴き出すマグマが溶岩湖を造り、巨大な噴煙を上げています。
火山ガス(水蒸気)
主成分の99パーセントは水蒸気ガスです。その他に、二酸化炭素や硫化水素、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)、塩化水素などが含まれます。
火山ガス(亜硫酸)
二酸化硫黄(亜硫酸ガス)は通常は無色ですが、ときに水蒸気ガスと入り混じって黄色に変色する場合があります。
溶岩の断面
次々と流れ下る溶岩流が何層にも渡って堆積したものです。その時点で雨や水流に触れたり、冷え固まるまでに比較的多くの空気に触れた岩は内部の鉄分が酸化して赤味を帯びます。
溶岩滝(Lava Falls)
海岸が波によって浸食され、崖状になったところを流れ落ちる溶岩の造形物です。
溶岩ガスの噴出跡
ハワイの溶岩は玄武岩質溶岩で、内部に多くの火山ガス(99%は水蒸気ガス)を含みます。そのため、溶岩が冷却する際に噴き出して多孔質になります。
リム・オ・ペレ
海水に触れて泡立った溶岩が膜のような状態になったまま冷え固まったものです。リムとはハワイ語で海草を指します。
トップページの写真は、海に落ちる溶岩です。次回(通巻200号)はアロハWebカワラ版がどのような道を辿ってきたのか振り返ります。
筆者プロフィール
- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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