キラウエア岬野生動物保護区

カウアイ島の北東部に位置するキラウエア岬(Kilauea Point)は野生生物保護区に指定されています。野生生物保護区は全米に550あり、米国魚類野生生物局が管轄しています。このうち、ハワイ諸島には9つの保護区があり、カウアイ島には3つあります。キラウエア岬の保護区化は、海鳥の営巣地区保護が主な目的でした。国立の野生保護区に制定されたのは1979年で、その後、1988年には指定地域をクレーターヒルやモコレア岬にまで拡大され、約88ヘクタールの地域が指定されています。今日、保護区には年間50万人もの人々が訪れます。

キラウエア岬野生動物保護区入口

キラウエア岬の誕生については、1万5千年ほど前、10万年より手前、50万年ほど前など、諸説あります。カウアイ島は海上に出現してから600万年ほど経っているので、いずれの年代であっても、海底のマグマ溜まり(ホットスポット)からに遠く隔てられた時代ですから、噴火の規模はそれほど大きくなかったことでしょう。岬の先にあるモクアエアエ島は、海底から立ち昇る火山の跡で、かつてはキラウエア岬のひと繋がりでした。火口壁だったところは今日、落差60mほどの、海に面する絶壁として残ります。

キラウエア岬では数種類の海鳥を観察できます。その生息数はハワイ諸島最大です。また、ナイア(ハシナガイルカ)やハワイ固有の哺乳類であるイーリオ・ホロ・イ・カ・ウアウア(ハワイモンクアザラシ)、地上ではアココやアヘアヘア、ウーレイ、イリマなどの固有植物も観察できます。

オオグンカンドリ

海鳥のうち、もっとも多く生息しているのはアー(アカアシカツオドリ)で、木の枝に営巣します。岬からその様子を詳しく見るためにも双眼鏡を持っていくとよいでしょう。次に多く見られるのはウアウカニ(オナガミズナギドリ)で、尾の先端がすぼまっているのが特徴です。イヴァ(オオグンカンドリ)は翼長が2mほどもあり、ここでは最大の鳥です。比較的高所を飛びますが、二つに割れた尾ですぐに判別できます。多くの海鳥がこの海で魚を獲るのに対し、イヴァは他の鳥からその魚を横取りして暮らします。この他にも細長い赤い尾を持つコアエウラ(アカオネッタイチョウ)やネネ(ハワイガン)が見られます。出現率は低いですが、カウプ(クロアシアホウドリ)、ア(カツオドリ)、コアエケア(シラオネッタイチョウ)、アオ(ハワイマンクスミズナギドリ)、ウーリリ(メリケンキアシシギ)、アケケケ(キョウジョシギ)なども周年、あるいは季節によって見られます。モーリー(コアホウドリ)も姿を見せることがあります。

アカオネッタイチョウ

キラウエア岬野生生物保護区の活動は、野鳥を補食するマングースなどから岬一帯を守るため、保護区全域にフェンスを張りめぐらせることから始まりました。とくにネネに関しては、卵を直接地面に産むため過去に野生種が絶滅してしまった過去があるため、手厚く保護されています。ネネを除く海鳥たちの多くはこの岬周辺で子育てをし、子が巣立ちを迎えると、北西ハワイ諸島など、他の島へと戻ります。

保護されるのは海鳥だけではありません。イリマやアココ、アヘアヘアなどのハワイ固有植物の保護と繁殖も重要なプログラムのひとつです。灯台に向かって右手下の海岸にはハワイモンクアザラシやホヌ(アオウミガメ)が体を暖めにやって来ることもあります。冬季にはコアホウドリが子作りに飛来し、海ではザトウクジラの姿を見ることができるようになります。これらすべての活動をレンジャーと関連部署だけで行えるはずもなく、現時点で150名に及ぶボランティアが保護区で奉仕活動を続けています。

アココ

キラウエア灯台

保護区内に立つキラウエア岬灯台は1913年に建てられたもので、主要ハワイ諸島最北端に位置します。1927年に、キラウエア灯台は合衆国西海岸からホノルルへの飛行機がルートを見失った際、修正の手助けをして注目されました。1976年には灯台守の制度は終了し、自動運転方式に変更されています。1979年には合衆国の歴史建築物に登録されました。この灯台は2012年に逝去したダニエル・イノウエ氏を記念し、2013年の、キラウエア灯台設立100周年にちなみ、ダニエル・K・イノウエ・キラウエア岬灯台と改称されました。

キラウエア岬とキラウエア灯台

アプローチ

リフエからはノース・クヒオ・ハイウエー(56号線)を北上し、ガソリンスタンドの先にあるキラウエア・タウンの表示を右折し、コロ・ロードに入ります。次に左折してキラウエア・ロードに入り3kmほど進むと保護区に到着します。

キラウエア岬野生生物保護区
電話:808-828-1413
入場料:5ドル(16歳未満は無料)
開園時間:10:00~16:00

筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。

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