オアフ島の聖地
オアフ島のワイメアには数多くのヘイアウ(神殿)があり、戦国時代においても聖地として守られてきたという歴史があります。ワイメア渓谷はアフプアアと呼ばれる自治地区として古くから利用されました。今日、ワイメア湾は人気の高い海水浴場として知られますが、ここはかつてカフナ(祭司)が司る土地でした。今日でもプウ・オ・マフカとハレ・オ・ロノという2つのヘイアウが復元保存されています。
この他にもクー・ウラに捧げられたコア(ko‘a)と呼ばれる祭壇が残されています。これはマルケサスやタヒチから多くの人が移住する前に住んでいたとされる先住民が豊漁を祈願して作られた祭壇とされています。周辺にはその後に作られたヘイアウなどを管理するカフナ(祭司)の建物のレプリカなどがあります。
ワイメア渓谷は植物展示をメインにした施設がありますが、経営者は何度か変わりました。しかし2003年以降はハワイ先住民の運営となり、今日に到ります。この施設では「伝統教育を通じ、ワイメア渓谷の人的、文化的資源はもとより、天然資源を含めてこれを保護していく」ということが謳われています。
ワイメアの歴史
この地は18世紀末、ハワイ島のケアラケクアでクック船長を殺害された英国海軍が立ち寄ったことでも知られます。彼らはワイメアについて次のような記録を残しています。「一帯には多くの人が住んでおり、カマナヌイ川の土手は耕地として開墾されている。その景観は信じられないほど美しい。」また、クックの部下として世界周航に同行したジョージ・バンクーバーが、後に船長としてこの地を再訪したとき、彼の部下が原住民に捕らえられて人身御供にされたのはプウ・オ・マフカ・ヘイアウでした。
1973年にチャールズ・ピエッチがワイメア渓谷一帯の土地を購入しました。彼はこの地に点在するヘイアウの保存に尽力し、固有植物を含む原自然を守るために植物園を作りました。今日のワイメア・ヴァレー施設です。土地の北側に延びる山道には、19世紀に入植した日系人が建立したと思われる地蔵跡もあります。
ピエッチ以降、植物園は現在の呼び名になるまで、多くの経営者の手を渡りました。植物園の奥にあるワイヘエ滝の飛び込みはよく知られており、大型観光バスが続々とやって来た時代もありましたが、施設の方は植物園が中心ということもあるのか、それほど人気を集めることがなく、経営的には厳しい状況が続いて何度も閉鎖が噂されました。
施設内には5000から6000種に及ぶ植物が栽培されています。なかでもジンジャー類やハワイ固有のハイビスカス類はとても充実しています。その他にも絶滅を危惧されている多くの植物の保護と繁殖が行われています。この植物園には小笠原の植物コーナーもあります。同じ亜熱帯に属する小笠原諸島では、ハワイとよく似た植生が見られます。沖縄ではなく小笠原諸島が似ているのは、2つの諸島間が海流で繋がっているためです。
ワイメアヴァレーは鳥類の保護でも歴史に名を刻んでいます。かつて、ハワイ固有種であるネネ(ハワイガン)はマングースなどに襲われ、野生種は絶滅しました。このとき、ワイメアヴァレー(当時はワイメア・フォールズ・パーク)で飼育されていた数十羽のネネが、英国のロンドン動物園で飼育されていたネネとともに繁殖を行ない、今日に見られる数千羽にまで復元させることに成功しました。
植物園の出入り口脇にはビジターセンターがあり、土産品などとともに、ワイメアに関する多くの歴史や文化、植物や動物に関する書籍が販売されています。また、同園では毎年栽培している植物の販売も行なっています
ハワイの植物園はどこでもそうですが、どんな質問にも快く答えてくれます。ここもその例外ではなく、スタッフがわからない場合は資料を調べて答えたり、トランシーバーで詳しい人間に確認してくれたりします。また時間があれば該当の植物が生育する場所まで連れて行ってくれることもあります。ぜひ活用してください。
ワイメアヴァレーへのアプローチ
ホノルルからH1に乗り、パールシティーをすぎてH2へ。ワヒアヴァ(Wahiawa)から99号線でハレイヴァ(Haleiwa)方面へ向かう。ハレイヴァに入る手前のバイパスを経由して83号線を北上し、10kmほどのところにある急カーブの右手にワイメア自然公園の看板がある。ルートは入場料金を支払った敷地内にある。バスは52番に乗り、パールリッジ、ワイアワ、ハレイヴァを経てワイメア・ビーチ下車。ゲートまで徒歩約5分。所要時間は約1時間半。
住所 : 59-864 Kamehameha Highway Haleiwa, HI 96712-9406 USA
電話 : 808-638-7766
開園時間 : 9:00 - 16:00 (月曜定休)
サイト :https://www.waimeavalley.net/
筆者プロフィール
- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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