オヒア(またはオヒアレフア、レフア)は在来のハワイ植物として今日でももっとも多くの分布面積を占めます。今回はオヒアの自然と文化について、2度に分けてお伝えします。
オヒアという植物
オヒアはフトモモ科の植物ですが、ハワイではほかにもユーカリやグァバ、オヒア・アイ(マウンテンアップル)などが同じフトモモ科に属します。オヒア・レフアの近縁には小笠原諸島のムニンフトモモがあり、かつての日本ではハワイフトモモとも呼ばれました。ハワイの伝統文化では、オヒアは樹木、レフアは花を指しますが、タヒチにおいては、オヒアもレフアも、ともに花を含む樹木を指す言葉です。
原産地
オヒアは、オーストラリアやニューギニア島に分布するフトモモ科の植物がハワイ諸島に渡って進化したとされます。「渡り鳥が種子を運ぶ」「風に舞って運ばれる」「潮流に乗って倒木がたどり着く」といった過程を経て根づいたのでしょう。オヒアは、ニイハウ島とカホオラヴェ島を除くハワイ諸島に広く分布します。今日のハワイ諸島には1,000種前後の固有種と、2万を超える外来種が分布します。割合という意味では、オヒアはわずか2.1万分の1の植物に過ぎません。しかし今なおハワイ州で最大の勢力を持ちます。
花の特徴
花と花弁、苞葉、萼などで構成されますが、オヒアの花であるレフアの花弁と萼(がく)は数ミリほどしかありません。それぞれ5枚ずつつけますが、開花して間もなく落下(落花)してしまいます。そのため、一般に花と呼ばれているのは、シベの集合体です。写真ではわかりにくいですが、ひとつの花托(花のひとまとまり)から雄シベと雌シベを延ばしますが、雌シベはひとつの花托に1本のみで、残りはすべて雄しべです。しべの長さは2cm前後で、花序(複数の花托とその上につくしべの集まり)は4~6cmほどです。最初に雄しべから剥落し、最後に雌しべ一本が残り、やがて枯れます。
レフアは、遠目にボンボン状(球状)をしていますが、近くで観察すると、いくつかの花托に分かれているのがわかります。写真の黄色のレフアでは8つほどの花托に分かれています。花(花弁と萼)はその縁に小さく目立たない形で付いています。
花色
花色(シベの色)は、赤、朱、オレンジ、クリーム、黄色などがあります。このうち、黄色の花をつけるものはレフア・マモと呼ばれることがあります。今は絶滅してしまいましたが、体の一部に黄色の羽根があったマモという鳥にちなんで名づけられたものです。ときに白色のレフアを見たという話を聞きますが、
レフアに白色はありません。マイアピロやオヒア・アイなどを白いレフアと勘違いしている人が多いようです。
蜜と受粉
レフアの花は周年で咲きます。地域差や海抜による差はあるものの、6月頃が花のピークです。花(雄シベと雌シベの集合体)が生長すると蜜を出し、その甘い香りに誘われて、ハワイミツスイの一種であるアパパネやその他の野鳥、昆虫などが飛来します。
種子の生長
しべが落ちると花托が膨らみはじめ、実となります。完熟するとへそのような部分が十字に裂け、内部から種子が放出されます。比較的大きな実を付けるものもあれば、ほとんど膨らみのない状態で完熟するものもあります。
散布
実が完熟すると、写真のへそのような部分が十字に裂け、砂粒のように小さな種子が顔を出します。種子は小さく軽く、風に乗って周辺に広がります。
葉の特徴
若い葉の蕾(リコ・レフア)はピンク色または赤色となることがありますが、基本は緑色です。
葉の外観は生長する環境によって大きく異なります。たとえばカウアイ島のアラカイ湿原では栄養分が不足しているため、葉は小さくて肉厚(多肉種)であり、黒っぽい色をしていて繊毛(せんもう)に覆われています。しかし、環境の良いところで生育する場合、葉は薄く明るい色をしていて艶があり、繊毛はほとんどありません。
木の生長
オヒアは育つ環境で大きくその形を変えます。最初に葉を見ていきましょう。2点の写真はいずれも同じ種(しゅ)のオヒアですが、葉の様子はまったく異なることがわかりますよね? 同じように木の全体も異なります。ちなみに木の全体を指して「株(かぶ)」と言います。
オヒアは標高300mから3000mの、日差しの多い土地に生育します。ハワイ諸島の20%を占めるとともに、ハワイの原生林の約8割を占めます。枝や幹は節くれだっています。
写真はカウアイ島のアラカイ湿原で撮影したオヒアです。樹高はわずか30cmです。周辺数キロ平方メートルでいちばん高い木でも50cmほどしかりません。株(木の全体)はまったく異なりますが、花は色、サイズともに同じです。花だけは環境に左右されません。巨木に育つものは杉のように真っ直ぐになります。樹高は20mを超すものもあります。
筆者プロフィール
- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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