先月ご紹介したアラカイ湿原には、多くのハワイ固有の植物が生息しています。今月はそれらの植物をいくつかご紹介しましょう。
ハーハーアイアカマヌ(Hāhāʻaiakamanu)
ハーハーアイアカマヌは、ハワイ固有種のロベリアの一つです。独特な進化をとげたハワイのロベリアは、125種類以上あるとも言われています。根付いた環境に合わせて、ほんの数種からハワイ固有種のロベリアは進化しました。7〜9mにもなる巨大なものや50cmほどの低木のもの、薄く細い葉のものや厚みのある丸い葉のもの、白い花、ピンクの花、紫の花など様々です。
受粉を行う送粉者が、ロベリアの種類で異なるのも大きな特徴です。中でも送粉者が鳥のロベリアは、ハワイ固有種のミツスイたちと強く繋がっています。
様々なロベリアの花の形に合わせて、ミツスイのクチバシは多種類に進化し、様々な形のミツスイのクチバシに合わせて、ロベリアの花も多くの種類に進化する共進化をしたと言われています。
長い年月をかけてゆっくり進化したロベリアとミツスイですが、近代になって外来種のブタやヤギ、ネズミや蚊などがハワイに定着すると、その劇的な環境の変化に対応できなくなりました。
送粉者である特定のミツスイが蚊の媒介する病気やネズミなどによる卵の食害で少なくなると、送粉者のいなくなった種類のロベリアは減ってしまいます。特定のロベリアの蜜を吸うために進化したクチバシになったミツスイは、そのロベリアが野生の豚やヤギなどによる食害などで少なくなると、同様に生息数が少なくなってしまいます。
現在ハワイ固有種の多くのロベリアやミツスイは絶滅の危機にあり、既に絶滅してしまったものも少なくありません。
ハーハーアイアカマヌは、ハワイ固有種のロベリアの中で一般的なクレルモンティア属の植物です。アラカイ・スワンプ・トレイル(以下、アラカイ・トレイル)の森林でよく見つけることができました。ハーハーアイアカマヌの「ハーハー」はハワイ語で「鳥の食べ物」という意味があるそうです。写真のように蜂によっても受粉できているのかな。
オヘ・ナウパカ(’Ohe naupaka)
ナウパカと言えば、二つに引き裂かれて半円の形になった、という恋人たちの悲劇の神話が残る、ビーチ・ナウパカ(Naupaka kahakai)やマウンテン・ナウパカ(Naupaka kuahiwi)を思い出します。オヘ・ナウパカは前述の2つのナウパカと同じクサトベラ科のハワイ固有種ですが、花の形は半円ではありません。
ハワイ語で竹を意味する「オヘ」という名前が付くように、オヘ・ナウパカの花の形は竹のような筒状です。カウアイ島とオアフ島の標高の高い湿潤林に生育しています。ハーハーアイアカマヌと同様、アラカイ・トレイルの森林で見つける事ができました。4mにも育つものもあるそうですが、私が見つけたのはだいたい2m以下くらいでした。オヘ・ナウパカは、紫がかった黒い実を結びます。
ハワイのロベリアと同様に、オヘ・ナウパカも送粉者であるハワイ固有種のミツスイと共進化したと言われています。少し曲がったチューブ状の花は、曲がった長いクチバシを持つミツスイが蜜を吸いやすいように進化したものです。
アラカイ・トレイルを何度か歩いて、年を追うごとに固有種の鳥を見つけにくくなった、と感じました。曲がったクチバシを持つミツスイの参考として、イイヴィの写真を添付していますが、私はアラカイ・トレイルでイイヴィを見かけたことはありません(だいぶ以前に鳴き声のみ聞いたことがあります)。ミツスイの減少とともにオヘ・ナウパカも減ってしまうのかもしれません。
カナワオ(Kanawao)
アジサイ属のカナワオも、ハワイ固有の植物です。ニイハウ島とカホラヴェ島を除く、主なハワイ諸島の湿度が高い原生林でよく見る事ができます。花々を縁取る装飾花はありませんが、日本のアジサイの原種、ガクアジサイに似ていますね。
ガクアジサイも大きく育つそうですが、カナワオも1mほどの低木から6mになるものもあるそうです。園芸種のホンアジサイは結実しませんが、ガクアジサイ同様にカナワオも実を結びます。両性花のガクアジサイと違い、カナワオは雄株と雌株がある雌雄異株の植物です。
カナワオの花は、白やピンク、薄紫、緑に近い青などがあり、秋になると茶、赤、濃い赤紫色の実をつけます。古代ハワイでは、カナワオの実を食べると子宝に恵まれる、と考えられていました。王族たちは、たくさん実がついたカナワオを子孫繁栄の印として好んだそうです。
さて、アジサイと言えばカタツムリですが、カナワオもハワイ固有種のカタツムリの住処として好まれているそうです。ハッピー・フェイス・スパイダーと呼ばれる、体の模様が笑顔のようなに見える蜘蛛も、カナワオの葉裏によくいると聞きます(でもハッピー・フェイス・スパイダーが生息するのは、オアフ、モロカイ、マウイ、ハワイの各島々で、残念ながらカウアイ島のアラカイ湿原にはいないようです)。
また、カナワオの実は鳥たちの食べ物になっています。カナワオは野生の豚やヤギなどの食害で少なくなっているそうですが、アラカイ・トレイルでは見つけやすい植物でした。
筆者プロフィール

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ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/
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