まだ寒い日もありますが、春を感じる今日この頃です・・・花粉も感じますが。花粉症さえなければ、春に咲く花を探しに、散歩するのにとても良い時期なのですが。というわけで、花粉症で外出したくない方にも安心、おうちでハワイの花をご覧ください。今回ご紹介するのは、実がなる小さくてかわいい花々です。

アカラ(Ākala’)

ハワイアン・ラズベリーの名前でも知られるアカラは、ハワイ固有の植物です。大きいものだと4mを超える高さにまで育つそうですが、私が見かけたアカラは、2m前後のものが多かったと思います。

可憐なアカラの花

可憐なアカラの花

ハワイ固有の植物は、捕食動物がいない環境が長く続いたため、トゲが退化しているものもありますが、アカラにはバラ科特有のトゲトゲが残っています。とは言え、アカラのトゲはバラのトゲに比べると、細く小さく、トゲのない個体もあるそうです。そのためヤギなどの食害にあい、アカラは数を減らしています。それに比べて、外来種のトゲトゲがたくさんあるベリーはハワイの森で増えていて、深刻な問題になっています。

イイヴィ(写真は幼鳥)も、アカラが大好き

イイヴィ(写真は幼鳥)も、アカラが大好き

アカラとは、ハワイ語でピンク色の意味があります。そんなアカラの花は、可憐なピンク色。アカラの実も、赤い宝石のようです。ハワイの森のお姫様のようなアカラは、ハワイミツスイたちも大好き。アパパネやイイヴィ、アマキヒなどのミツスイが、アカラのミツを吸うためにやってきます。アカラはラズベリーに似た実がなり、食べることもできます。一度食べてみたことがありますが、甘いというより酸っぱい感じでした。

宝石のようなアカラの実

宝石のようなアカラの実

私がアカラをよく見つけるのは、ハワイ島のサドル・ロード沿いの森や、マウイ島ハレアカラの森です。春にハワイの森を歩くときは、ピンクのかわいいアカラの花をぜひ見つけてください。

オヘロ(ʻŌhelo)

ハワイの森を歩いていると、よく見かけるハワイ固有の植物のひとつにオヘロがあります。オヘロはツツジ科で、膝丈から腰の高さくらいの低木です。葉も花も小さめで、一見地味な印象を受けますが、真っ黒な溶岩の大地に赤い実を付けたオヘロが密生している様子は、とてもきれいです。
オヘロは溶岩大地に初めに根付く植物の一つで、ハワイ島のボルケーノやサドル・ロード沿いのトレイルをハイキングしているとよく見かけます。オヘロの実は、ハワイ州の州鳥でもある固有種の鳥、ネネの好物だそうです。オヘロの実は、とてもおいしいそうですが、ネネの食べ物を食べたらダメかな、と思うので、まだ摘んで食べたことはありません。

オヘオの小さな花と実

オヘオの小さな花と実

ハワイでは、オヘロは火の女神ペレに捧げる神聖な果実と言われています。ペレの姉妹のカオヘロが亡くなり、埋葬された場所から生えたのがオヘロだそうです。カオヘロが姿を変えた、と言われるオヘロの実を取る時は、最初の一粒をペレへ捧げないといけません。そうしないと、雨や霧が帰り道を隠してしまう、と言われています。ボルケーノやサドル・ロードは、頻繁に天気が崩れたり、深い霧が出る場所ですから、ペレの不興を買わないように気をつけなければいけませんね。

黒い溶岩に映えるオヘオの赤い実

黒い溶岩に映えるオヘオの赤い実

また、オヘロに似たアキアという植物があり、毒性が強い実を付けるので、こちらにも注意が必要です。

プキアヴェ(Pūkiawe)

プキアヴェも、ハワイの森でよく見る植物です。プキアヴェは、エパクリス科というオセアニアに多い植物の仲間で、ハワイ固有の植物。マウイ島のハレアカラやハワイ島のボルケーノをハイキングをしていると、大きな茂みになっていたり、地面に広がるように密生しているプキアヴェをよく見かけます。プキアヴェは、細かい密生した葉に小さな白い花をつけ、赤やピンクや白の丸い実がなります。「花見に行こう!」というテーマですが、プキアヴェもオヘロも花よりも実の方が目立つ植物ですね。

プキアヴェの小さな白い花と白い実

プキアヴェの小さな白い花と白い実

特にプキアヴェは、鮮やかな赤い実が鈴なりになっている様子は、なかなか見事です。緑の葉と赤い実のコントラストもよく、私はいつもクリスマスを連想してしまいます。このプキアヴェの実も、オヘロと同様にネネが好んで食べますが、オヘロとは違い人間向きではないそうです。

ハワイではプキアヴェを、薬やレイの材料に使っていましたが、神事にも使われてきました。

赤いプキアヴェの実

赤いプキアヴェの実

古代ハワイには王族や貴族と平民、奴隷といったカーストがあり、上位のカーストの人々の方が「マナ」と呼ばれる力が強い、とされていました。アリィと呼ばれる上位カーストの人々が平民に会うときは、プキアヴェを燃やした煙で身体を燻したそうです。プキアヴェの持つ力で、アリィの持つマナを弱めることができた、と言われています。
プキアヴェは、湿地でも乾燥した土地でも、低地でも高い山の上でも、暑くても寒くても適応できる植物です。古代ハワイの人々は、強いマナがプキアヴェに宿っていると思っていたのでしょう。

筆者プロフィール

NOPU
NOPU
ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/

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