サトウキビ列車に書かれた「LAHAINA」

サトウキビ列車に書かれた「LAHAINA」

マウイ島のラハイナを襲った大火災から、一年が経ちました。当時、このニュースを知った私は、朝7時にマウイ島が好きな友人にSNSで、うろたえたメッセージを送ってしまいました。私が初めて滞在したハワイの島はマウイ島、ラハイナは初めて探索したハワイの町です。今月のハワイ日和は、ラハイナの思い出を聞いて下さい。

ラハイナ、フロント・ストリートに並ぶ店々

ラハイナ、フロント・ストリートに並ぶ店々

西マウイのカアナパリは海岸線に沿って大型ホテルやコンドミニアムが建ち並ぶ、マウイ島を代表するリゾート地区です。そのカアナパリからシャトルバスでも行けるラハイナは、ショッピングにもレストランを利用するのにも、便利な町でした。
初めてのハワイは宿がカアナパリだったので、日中にマウイ島を観光して、夕方にラハイナをぶらぶらするようになりました。カアナパリに滞在して、同様の日々を過ごした、と言う方も多いのではないでしょうか。
ラハイナをぶらぶらしていると、お土産屋さんやレストランに混じって、たくさんのギャラリーがある事に気付きました。ラハイナは、アートの町でもあったのです。

ラナイナのシンボルだったバニヤン樹

ラナイナのシンボルだったバニヤン樹

ラハイナの海岸線に沿って延びるフロント・ストリート沿いには、様々なアート・ギャラリーが軒を連ねていました。日本で人気のあったラッセン氏のギャラリーも見かけました。たしか、ラッセン氏はマウイ在住だったと思います。
ラハイナの南にある大きなバニヤン樹の下では、アーティストが作品を並べているところをよく見かけました。バニヤン樹はとても大きく、立派で、ハワイ語で「残酷な太陽」という意味を持つラハイナの暑い日中でも、涼しい影を作っていました。植樹から150年以上もたつバニヤン樹は、ラハイナだけではなくマウイ島のシンボルでした。

旧ラハイナ裁判所から見たラハイナ港。右に見える建物がパイオニア・イン、左に白い小さな灯台も見える

旧ラハイナ裁判所から見たラハイナ港。右に見える建物がパイオニア・イン、左に白い小さな灯台も見える

バニヤン樹の前には、旧ラハイナ裁判所がありました。優雅で美しい建物で、2階の窓からバニヤン樹を見下ろすと、人々が木陰で涼を取りながら語り合っていたり、休んでいる様子が見えたものです。海側の窓からはラハイナの港が見えました。港には、たくさんのボートやヨットが並び、クルーズへ向かうため集まった観光客たちでいつも賑わっていました。
旧ラハイナ裁判所の中には、ハワイの歴史を示す、多くの貴重な品々も展示されていました。古代ハワイアンが使った釣り針や、移住してきた人々が使った雑貨など、人々の生活を伺わせる展示が多く、興味をひかれたのを覚えています。

パイオニア・インの入り口に飾られていた、海を見ている船長さん

パイオニア・インの入り口に飾られていた、海を見ている船長さん

旧ラハイナ裁判所から道を渡った隣り、港に面したホテルがパイオニア・インです。パイオニア・インは、マウイ島で一番古いホテルでした。マウイ島だけではなく、ハワイ州の中でも最も古いホテルの一つで、創業は1901年だったそうです。私は宿泊したことはありませんでしたが、レストランを利用した事があります。プランテーション時代のノスタルジックな外観の建物は、内部もクラシックでした。船の舵輪や船首像が飾られ、捕鯨港として賑わったラハイナを思わせるような内装でした。
パイオニア・インの前には、ハワイで最も古いと言われる、灯台が立っています。2階建てのパイオニア・インとあまり高さが変わらない、とても小さな灯台です。大火災の後の写真を見ると、この灯台が火災に耐えて残った事がわかります。

サトウキビ産業の歴史を残す煙突

サトウキビ産業の歴史を残す煙突

捕鯨港としての役目が終わった後、ラハイナはマウイ島のサトウキビ産業の中心地となりました。輸送のための鉄道も敷かれ、製糖工場へとサトウキビが運ばれていたのです。この鉄道は観光列車となり10年ほど前まで西マウイを運行していたのですが、老朽化のため運行が停止されていました。観光列車では大人も子供も楽しそうでした。駅でぴょんぴょん跳ねながら、汽車を迎えていた小さな子を思い出します。
かつて地域の中心産業であったサトウキビ産業も20世紀末に終焉を迎え、サトウキビ畑も工場もなくなりましたが、工場の煙突だけがハイウェイ沿いに残りました。高さ225フィート(約69メートル)の煙突は、今もラハイナのランドマークです。

古い建物が並んでいたラハイナの街角

古い建物が並んでいたラハイナの街角

ラハイナにはたくさんのレストランやショッピングモール、スーパーマーケット、アウトレットもあり、マウイ島観光の中心を担っていましたが、ハワイの歴史が其処此処に残っている場所でした。ギャラリーやレストランになっている建物にも、20世紀初めの年号が付いていたり、オーナーだった方と思われる名前が残っているものもありました。「ここは日本人オーナーの建物だった、ここは映画館だった」とパステルカラーの建物を眺めながら散策するのも楽しい時間でした。
中心地から少し外れた場所では、プランテーション時代に建てられたと思われる、ポーチの広い民家も並んでいました。その住宅街は意外なほど静かで、大きな木にマンゴーがたわわに実っていたことを思い出します。
夕方に訪れたラハイナのビーチでは、海を進むカヌーの向こうにラナイ島の大きな島影が見えました。近くの寺院の鐘の音も聞こえました。

夕暮れのマラ埠頭。ラナイ島が見えます

夕暮れのマラ埠頭。ラナイ島が見えます

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筆者プロフィール

NOPU
NOPU
ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/