ワイルアの町を山側に走るクアモオ・ロードと言う道がある。古代ハワイでは、王室関係など高貴な身分の人だけが入ることを許されたそうで、アリイ(王)・ロードとも言われていたそう。
左右にワイルア川が流れ、ハワイ文化発祥の地と言われるワイルア・エリアのメイン・ロード。それゆえに、クアモオ・ロード沿いには数々のヘイアウや歴史、文化を垣間見れる場所が多く点在している。

ホロホロ・クー、ポリアフなどのヘイアウを左手に見ながらクアモオ・ロードをずっとワイアレアレ山に向かって車を走らせて行くと、通常車で行ける行き止まり地点に到着する。アブリイタムと呼ばれている、私のお気に入りの場所だ。
ワイルア一帯、とくにクアモオ・ロード沿いは、フラともゆかりの深い場所。過去にたくさんの儀式やウニキ(フラの卒業の儀式)が行われている。
タパリマ・アロハ(※) ツアーでも、ハワイ文化、フラの旅をする時にはよくゲストをご案内させてもらう場所でもある。

橋ができる前は、左側にある道路を4WDか徒歩で渡っていた。

最終地点の駐車場に行くには、川を車で走って越すか、4WD以外の車で行く場合は、手前の駐車場に車を止めて徒歩で渡渉するか.....だった。
最近、この川の上に橋ができた。
コンクリートのガッチリと頑丈そうな橋である。
橋ができてから初めて、この場所に行ってみた。
景観が一変していて驚いた。
気持ちの中にススゥ~とすきま風が吹いた。

新しくできた橋。背後にはこれまでと変わらない自然が広がっている。

建設理由は、ここを訪ねてくる人により快適な場所を提供するためだと聞いた。
「それにしても、こんな風にする必要があるの?」
というのが正直な感想。
一度、建設されてしまったものをどうこう言ってももうどうにもならない。けれど、もう少し景観を考慮した橋を造れなかったのかな、と言う思いがブクブクと泡立つ。
長い長い時間、ハワイ文化とハワイ人の暮らしを見守ってきたこの場所である。その面影をできる限り残す形で工事が進まなかったのは「残念」のひと言。

橋とともに土が丸出しだったところにアスファルトの道、駐車場が設備された。

カウアイ島は、観光産業で成り立っている。
日本の人にはあまり知られていなかったり、日本の人はあまり見かけないものの、アメリカ人からは絶大な人気があり、「ナショナル・ジオグラフィック・トラベル」誌に"訪ねたい地"No.1 に選ばれている。近年はヨーロッパからの観光客もその数をグングンと増やしている。

観光客が増えるに従って、観光地の整備がグングンと進むのは、ある意味、仕方がないのだろう。私自身も移住した身で、ローカルたちと同じように観光化が進む、開発が進む現状を憂う立場にはないのかもしれない。
一方で、カウアイ島の美しさに魅せられて移住してきて、カウアイ島の自然が持つ美しさ、貴重さに気づいている一人でもある。(と思っているのですが....)

手つかずの場所に立つ、ユカリプスの木。たくさんの時代の変化を見守ってきた古木が周辺を囲んでいる。

土と樹木、自然なものだけでひっそりと美しくあった場所に、コンクリートと鉄筋の建築物がドドンと建つと、その違和感はハンパない。
けれど、樹木、背後にある山、周囲を囲む自然がこの場を、これまでと変わりなく、静かで癒しに満ちた場所にしている。これからもここは、ハワイアンにとって、ローカルや島の住人にとって心身を休める場所であり続けるのだろうと思う。そして、忙しい都会から来たツーリストに、ひとときの静寂を贈り続けてくれるのだろう。コンクリートと鉄筋の橋ができてもなお、それに打ち勝つほどの強い自然のエネルギーがここには満ちている。
この場所だけではなくて、島の多くの場所で開発や補修工事が進められている。島人の暮らしや、ツーリストに便を運ぶこと、そして自然を守ること。
方法によっては、相反してしまうこの2つのプロジェクトの間で、より美しい歩み寄りが行われることを心から願っています。

(※)タパリマ・アロハ・ツアー
カウアイ日記を書いているMinori K. Evans 主宰のツアー・コーディネート・オフィス。カウアイ島でのハワイ文化とフラのツアーから、観光ツアーまでを開催。カウアイ島の魅力をお届けしている。

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筆者プロフィール

ミノリ エヴァンス
カウアイ島に通いつめ、ついに永住してしまったハワイ大好き娘。日本ではアウトドア活動をばりばりやっていただけあって、カウアイ島のおもしろスポットについてはしっかりとチェックしている。連載に乞うご期待!