ハワイの州花は黄色のハイビスカスです。名前をマオ・ハウ・ヘレと言い、ハワイ固有の花として知られます*。この州花は2番目に制定されたもので、最初の州花はハワイ語をコキオ・ウラ(赤いハイビスカス)と呼ばれるハイビスカスです。ハワイに固有のハイビスカスはこの他にも多くの種類がありますが、なかでもコキオ・ケオ・ケオと呼ばれる白いハイビスカスは歴代の州花よりも多くの場所で見ることができます。
*英語ではハワイアン・ネイティブ・イエロー・ハイビスカスと呼ばれます。残念ながらあまり認知度は高くなく、園芸品種であるハワイアン・ハイビスカスの一種であるハワイアン・イエロー・ハイビスカスと勘違いされることが多くあります。
ハイビスカスの種類
最初にハワイ在来の(固有の)ハイビスカスを整理しておきましょう。アオイ科に属するハワイ諸島のハイビスカスは3つのグループに分かれます。Hibiscus属(10種類)、Hibiscadelphus属(6種類)、Kokia属(4種類)です。それぞれのグループは外観やサイズがかなり異なります。とくにハワイ語でハウ・クアヒヴィ(山のハイビスカス)と呼ばれる仲間は、花弁はとても小さく、しっかり開花することもありません。しかし長い花柱など、共通する性質もあります。今回紹介するコキオ・ケオ・ケオはこのヒビスクス属の仲間のひとつです。
コキオ・ケオ・ケオ
コキオ・ケオ・ケオ(Hibiscus arnotianus)はオアフ島が原産で、生長すると3~6メートルほどになります。カウアイ島やモロカイ島などではその亜種も見られます。花弁は白で花柱は深紅、花に上品な香りがあることと、長い花柱が特徴です。まれに淡いピンクの花弁も見られます。固有のハイビスカスのなかではもっとも多く見られること、香りが高いこと、大きく押し出しも良いことなどを兼ね備えるので、個人的にはコキオ・ケオ・ケオが州花に相応しいと思えるほどです。
部位の名称
ハイビスカスの仲間は花弁が突き出すような太い花柱を持ちます。これは雌しべでもあります。その周辺に細い糸のようなものと、その先に葯(やく)を持ったものの集合体が雄しべです。
本種の亜種にプナルウエンシスと呼ばれるものがあります。葉が本種より革質なのが特徴です。コキオ・ケオ・ケオに、中国原産のブッソウゲをかけ合わせたものは、ワイキキを中心に世界でよく知られるハワイアンハイビスカスと呼ばれる園芸品種です。
オアフ島が原産なので、コオラウ山脈では全域に渡ってトレイルなどで見ることができます。植物園ではライアン演習林やリリウオカラニ植物園、ココ・クレーター植物園、ホオマルヒア植物園など、ほとんどの植物園で観察できます。
ワイメアエ
オアフ島原産の基本種がカウアイ島で独自の進化を遂げたものにワイメアエ(H.waimeae)があります。コキオ・ケオ・ケオにそっくりですが、花弁の縁が丸みを帯びているところが異なります。生長すると5~6メートルの高さになります。
ハネラエ
ワイメアエの亜種にカウアイ島のワイメア渓谷などに生育するヒビスクス・ハネラエ(H. waimeae subsp. hannerae)があります。花柱のサイズに対して花弁が小さいのが特徴です。株もワイメアエよりは小振りで4メートル前後です。
イマクラトゥス
コキオ・ケオ・ケオの種子がモロカイ島で独自の進化を遂げ、亜種となったものにイマクラトゥス(H. arnottianus subsp. immaculatus)があります。オアフ島の本種と異なり、花柱や花糸(雌しべと雄しべ)が白い点が特徴です。本種同様香しい香りがあります。ちなみに白いハイビスカス(原産種)はハワイ語でプア・アロアロとも呼ばれました。オアフ島ではワイメア植物園などで見られます。
伝統文化での役割
ハワイの伝統社会では、花汁は⾎流をよくするために、他の植物の花汁と混ぜ合わせて服用しました。葉を揉み出した液は便秘薬として用いられましたが、子供に与える場合は、⺟親が花の蕾を噛んで柔らかくしたものを与えました。この花汁と種子は、衰弱したときの滋養回復にも効果がありました。また幹の部分から品質の高い炭を採りました。花はレイにされることもありました。
冒頭でお伝えしたように、在来の(固有の)ハイビスカスではもっとも遭遇する機会の多いハイビスカスです。出会いがありましたらぜひその高貴な香りを体験してください。
筆者プロフィール
- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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