ハウ・ヘレ・ウラ

ハウ・ヘレ・ウラ

ハワイ州の花として知られるハイビスカスですが、ハワイ諸島にはあまり知られていない、固有のハイビスカスがあります。ハワイのハイビスカスは大きく3つのグループ(属)に分かれます。ひとつは前回お伝えした、Hibiscus 属で全10種です。今回は残る2種について紹介します。

最初に、Hibiscadelphus 属です。このグループは最大でも樹高7メートルほどの小木~中高木で、大きな葉と、見逃してしまいそうな小さな花が特徴です。

Hibiscadelphus 属には、H.bombycinus, H.crucibracteatus, H.distans, H.giffardanus, H.hualalaiensis, H.wilderianus の6種がありますが、2014年に新種の H.stellatus が発見され、現在は全7種となっています。ヒビスカデルフスという属名は「ヒビスクス属に似ているグループ」という意味です。このリストには含まれていませんが、新種が発見された一方で、つい最近、絶滅した種(しゅ)もあります。H.woodii と名づけられたカウアイ島の固有種は、限定された場所に生息していましたが、地崩れによって一気に消滅し、わずかに残された株も2011年に死に絶えました。ヒビスカデルフス属は花弁がとても小さいため、ハイビスカスには似ていないように見えますが、花柱はハイビスカスの仲間にそっくりであることがわかります。

ヒビスカデルフス・ディスタンス

ヒビスカデルフス・ディスタンス

ヒビスカデルフス・ディスタンス

樹高は5メートルほど。直径が5~8cmほどの、少し白味を帯びた幹が特徴です。カエデに似た葉のサイズは4~10cmほど。花は1~3cmほどで指先ほどの大きさしかありません。ハワイ語ではハウ・クアヒヴィと呼ばれます。生息数はきわめて少なく、十数株とも言われます。

ヒビスカデルフス・ギファルディヌス

ヒビスカデルフス・ディスタンス

ヒビスカデルフス・ギファルディヌス

ヒビスカデルフスの仲間ではもっとも大きく、樹高は7メートルほどになります。幹は最大で直径30cm、葉は10~30cmほどあります。しかし花のサイズはこのグループの例に洩れず、1~4cmほどしかありません。ギファルディヌスもハワイ語ではハウ・クアヒヴィと呼ばれます。

ヒビスカデルフス・ステラトゥス

ヒビスカデルフス・ステラトゥス(Photo by The Plant Extinction Prevention Program)

ヒビスカデルフス・ステラトゥス(Photo by The Plant Extinction Prevention Program)

昨年、西マウイのカウアウラ渓谷で発見された新種で、99株が確認されています。専門家によれば、ヒビスカデルフス・ウィルデリアヌスの亜種とされます。紫色を帯びた花弁が特徴で、葉のサイズは5~6cmです。

最後のグループはKokia 属です。葉はカエデに似ていて大きく、それに負けないほど大きく派手な花をつけます。いずれも花弁がカールしていること、蕾の段階では木果のように硬いことなどが特徴です。コキアという名称はハイビスカスを指すハワイ語のコキオに由来します。Kokia 属には、K.cookei, K.drynarioides, K.kauaiensis, K.lanceolata の4種が確認されています。

コキア・ドリナリオイデス

コキア・ドリナリオイデス

コキア・ドリナリオイデス

樹高は8メートルほど。葉は8~20cmで、5裂、7裂、9裂があります。花は9~11cmで鮮やかな朱色が特徴です。生息数はきわめて少なく、比較的乾燥した森の標高460~900メートルに分布するほか、ノースコナに見られます。ハワイ語ではハウ・ヘレ・ウラと呼ばれます。

コキア・クーケイ

コキア・クーケイ(Photo by Kim & Forest Starr)

コキア・クーケイ(Photo by Kim & Forest Starr)

低木で樹高は3~5メートル。葉のサイズは5~13cm。葉は5~7裂します。花のサイズは6~8cmほどです。ハワイ島とモロカイ島に分布していましたが、モロカイ島では最近は発見されておらず、絶滅の可能性があります。ハワイ語ではハウ・ヘレ・ウラと呼ばれます。

コキア・カウアイエンシス

コキア・カウアイエンシス

コキア・カウアイエンシス

樹高は5~10メートルです。葉のサイズは12~25cmで、7裂~11裂と、細かく分裂しているのが特徴です。花のサイズは10~15cmと、この仲間ではもっとも大きく、ドリナリオイデスより少し明るい色をしています。カウアイ島の固有種で、湿り気を帯びた森の、標高350~600メートルに分布します。ハワイ語ではハウ・ヘレ・ウラと呼ばれます。

コキア・ランケオラタ

このグループではもっとも小木とされますが、樹高は不明です。葉のサイズは8~12cm、花のサイズは3.5~5cmです。ランケオラタはオアフ島に分布していましたが、19世紀末か20世紀初頭に絶滅したと考えられています。(※絶滅宣言が出ていないので、絶滅種としてはカウントされていません。)最後に発見されたのは1888年でした。

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。