我が家のネコ Goo (グー ) は、2年前のウォーレンくんのバースデーに、突然、我が家にやって来た。
その年の始めに愛犬パコが天国へ旅立ち、そのままにしてあったパコ用の出入り口ドアから、家の中にトコトコと入って来たのだ。ちょうど私はリビングのソファに座っていて、" なんだ、なんだ!?" と少しだけ驚きつつ見ていた。小さな仔猫だったグーは、ドアをはいってくるとまっすぐに私のところに来て伸び上がり、ポンっと前脚を私のヒザにのせた。精一杯伸び上がっても、座っている私のヒザに前脚があと少しで届かない、小さなカラダだった。" なんかちょっとかわいい " 。そう思ったけれど、ネコに接したことのない私にはどうしていいか分からない。

はじめて家に来た時のグー。外に出すと「入れて~」とばかりにドア際で家の中を見ていた。

はじめて家に来た時のグー。外に出すと「入れて~」とばかりにドア際で家の中を見ていた。

「お腹すいてるの?」と話しかけてみる。
「ノドも渇いてるのかな?」とも言ってみる。

仔猫はそのつぶらな瞳で、私を見上げるのみである。と、ひょいとジャンプして私のヒザに乗った。
そして、私の顔を仰ぎ見た。

「お腹すいてるの?」もう一度、聞いてみる。
「ノド、渇いてるの?」もう一度、聞いてみる。

ミャ~とも何とも言わないで、じーっとつぶらな瞳で見上げてくるだけである。

ゴハンをあげようにも、うちにはネコにあげる食べものがない。とりあえず、水をあげたような気がするけれど、それを飲んだかどうだったのかは憶えていない。当時の階下の住人がネコを飼っていたので、キャットフードを分けてもらって、差し出してみたら、それを少し食べた。
けれど、我が家に住み着いても困るし、迷いネコで飼い主が探しているかもしれない。家の外に出して「バイバイ!」と送り出した。

カラダは小さいながら、なかなかのワイルドさ。

カラダは小さいながら、なかなかのワイルドさ。

ところが、数分後にまたパコのドアから入って来て、私のヒザに乗ってきた。人に慣れているようだし、カラダもきれいなので、きっと誰かに飼われていたに違いないと思った。がしかし、このままでは住み着いてしまう。「ごめんね。」と言って、ヒザの上でついにはウトウトし始めた仔猫を、また家の外に出した。

その翌日から数日、オアフに行った私とウォーレンくん。オアフでの時間で、その仔猫のことはすっかり忘れていた。カウアイに戻ってからも見ることはなかった。がしかし、数日後の私のバースデーに、またもパコのドアから入って来たのだ。

ソファの上で寝てしまった仔猫を見ながら、パコのいた痕跡がまだまだ残る家で、こんなに心地良く過ごせるんだ~。なんかご縁があるのかなぁ~と思ってしまった。そして、だったらファミリーになろうと決めたのである。少し時間が経ったら、またイヌを飼おうと思ってはいたものの、ネコを飼うなんて思いもよらなかった。

リフエの先にある「ヒューマンソサエティ」に行き、耳にマイクロチップが入っているかどうかを調べてもらった。ヒューマンソサエティは日本での保健所のようなところ(少し違いますが)。飼われていたネコには、耳にマイクロチップが入っていることが多い。
グーの場合は、チップが入っていなくて、飼いネコだった可能性は低いと言うことが分かった。なので、アダプトの手続きを取った。
ファミリーとしてネコが我が家に来ることに決まった。家に連れて帰った直後から、これまでにもずっと我が家にいたように、グーは自由自在な様子で、家の外と中を往き来して、居心地が良さそうだ。

天窓の下で眠る時は、まぶしいのか目を覆って、このポーズで寝る。

天窓の下で眠る時は、まぶしいのか目を覆って、このポーズで寝る。

それから数日後、外で遊んでいたグーが、片目をしばしばさせながら家の中に戻って来た。
それまでは、私たちに触られるのも平気。ヒザにも乗ってくる。そんな様子だったグーが、顔つきが変わって、それ以来、私たちにカラダを触らせなくなった。その時、家の外で何があったのかは分からない。たぶん、近所のネコにアタックされたのではないだろうか。ともかく、その日を境にして、甘えっ子だったグーのなかで、 " ワイルドだぜ~(古っ!) " にスイッチが入ったようだ。

それからの グーは日々、野生味を増して、いまでは自立感満開の、ヒトには非社交的なネコだ。笑
同時におかしなクセもある。キャットフードを食べる時は、「ごはん!」と目と態度で聞いてくる。
キャットフードがそこに置いてあるのに、わざわざ私たちのところに来る。私たちのどちらかが、その場所まで一緒に行って、「ごはん、ここだよ」と手で指す。そうすると食べる。水を飲むのは水道から。ノドが渇いたら、水道近くに上がって、こちらを振り返る。チョロチョロと水を出すと、それを十分だと思うまで飲む。

水道からしか水を飲まない。不思議。

水道からしか水を飲まない。不思議。

一番悩ましいのが、グーがなかなかのハンター気質であると言うこと。そして時々、ゲットした獲物を家の中に持って帰ってくる。よく「ギフト」として飼い主に捧げに来ると聞くが、グーの場合は、獲物を家の中に持って来て、ゲージや箱の中にささっと入って獲物を隠す。その様子は、ちょっとイヌのようだ。獲物になるのは、家の周りに来るかわいい小ぶりの小鳥たち。そしてゲッコーやカメレオン。ハンティングはネコの野生の習性である。それを怒るのはためらいがある。グーにはネコらしく、野性味をなくさずにいてほしい。けれど、獲物になっている生き物たちに対して気の毒な気持ちも大きい。よくないのかな~と思いつつ、獲物を逃がすようにグーを追いかけてしまう。

アニマル・クリニックに行った時にドクターに聞いてみた。獲物を捕まえるのは、野生の本能だし、褒める場面なんだろうし。でも鳥やゲッコウたちが目の前でやられていると、助けたいと思うし。と聞くと、怒るようなことはしないで、何気に逃がしてあげるって言う感じがいいのかなと思うよ。と言われた。ドクターが調べたところでは、カウアイ島で年間ネコにつかまってしまう鳥はなんと5,000羽。世界中では5億羽だと言うからビックリである。

朝陽、夕陽どきには窓から外を見ていることも多い。なにを考えているのかな・・・

朝陽、夕陽どきには窓から外を見ていることも多い。なにを考えているのかな・・・

ある時、グーが、小さなカメレオンを襲っている場面に出くわした。
グリーンのカラダをしたカメレオンが、自分を捕まえようとしているネコに、真っ正面からギャー!ギャー!と口を最大限に開けて威嚇している。後ろ脚で立って、威嚇している。体長10cmくらいのカメレオンからすれば、グーは巨大なビルディングくらいの大きな生き物だ。
「すごいな! こいつ、かっけー!」と、隣でウォーレンが言い、
He is standing up for his life ! (自分の命のために立ち上がってる)と感心していた。私もけっこう感動してしまった。こんな小さなカラダで戦うんだと。あきらめないんだな~と。私だったら、とてつもない大きさの敵に至近距離で狙われたら、すぐにあきらめてしまいそうだとも思った。また別の日には、グーと戦っている小鳥も見た。動物たちの世界を垣間みることで、みんな一生懸命に生きているんだな〜と、意外にも勇気をもらう場面があったりする。

ペーパーバックが大好き、 いつも隠れては外をうかがっている。

ペーパーバックが大好き、
いつも隠れては外をうかがっている。

グーが我が家にやって来てから、もう2年が経とうとしている。駆け回るのは仔猫のうちだけよ。とネコ好きの友人たちは言ったけれど、今もグーは元気に庭を走り回り、家の中を走り回り、時にインテリアを破壊する。小鳥やゲッコーを捕まえようとしている時は、まさに小さなタイガーのような風情である。

我が家は、スリーピング・ジャイアントのトレイルの入り口にある。いちおう住宅地ではあるが、徒歩30秒先に、大自然が広がっている。そういう立地もあって、我が家にはたくさんの鳥が来る。庭の樹木の枝にはカメレオンや、きれいな蝶々がいる。ここはまさに、グーにはパラダイスである。そんな野性味あふれるグーだけれど、夜は私たちと一緒に寝ようとベッドの上にやって来る。昼間も私が家にいる時は、ソファやテーブルの上ですやすやと眠っていることが多い。ふわりと笑ったような顔で寝ているグーを見ていると、こちらの気持ちもユルむ気がする。そして、「平和な日常があること」の大切さと、それらの時間への感謝の気持ちが湧いてくる。

何かを狙っているモードのグー。顔つきがなかなかワイルドになるのだ。

何かを狙っているモードのグー。顔つきがなかなかワイルドになるのだ。

不思議なご縁で、たぶんきっとパコが結んでくれたご縁で、我が家にやってきたグー。自分がネコと住むなんて想像したこともなかったけれど(私は、ドッグLover だったのです)、一緒に暮らしてみると、ネコもなかなかに、かわいい。

日本ではいま、ネコが大ブームだと言うことを聞いた。(古いかも!?)
もし日本のネコが見たら、グーの暮らしはワイルド過ぎるのかもしれない。笑 カウアイの大自然のそばで、カウアイのネコらしく、ワイルドに奔放に暮らし続けてほしいな~と願うばかり。次の旅から帰ってきたら、また新しいファミリーがほしいなと探している今日このごろ。イヌを飼いたいのである。またいつか、今度はグーと新しいファミリー犬のお話をさせていただく機会を楽しみにしています。

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筆者プロフィール

ミノリ エヴァンス
カウアイ島に通いつめ、ついに永住してしまったハワイ大好き娘。日本ではアウトドア活動をばりばりやっていただけあって、カウアイ島のおもしろスポットについてはしっかりとチェックしている。連載に乞うご期待!