今月のハワイ日和は、読書の秋ということで、ハワイが舞台の本をご紹介します。

ハワイ島アロハ通信 (平野恵理子 著)

「ハワイ島アロハ通信」が出版されたのは、もう30年も前のことです。今ではハワイのネイバーアイランドについて書かれた紀行文はよく見かけますが、当時は珍しかったことを覚えています。それもハワイ島ヒロを中心に書かれた本は、ほとんどなかったのではないでしょうか。まだヒロに行ったことがなかった私は、何度も読み返して憧れを抱いたものでした。
おかげで、何度もヒロに滞在した今でも、「ヒロ」と言えば「ハワイ島アロハ通信」の平野氏のイラストを思い出します。この本には写真は一枚もありませんが、ヒロやハワイ島の小さな町の雰囲気が、より伝わってくる感じがします。どこかなつかしい、そしてなんとなくさみしいような、優しいヒロの雰囲気です。

ハワイ島ヒロの町並み

ハワイ島ヒロの町並み

この本で紹介される場所や建物は、今はもう無いものもあります。商店やレストランが閉店してしまっているのは、変化の早いハワイでは仕方がないことなのかもしれません。でも平野氏がヒロで個展を開いた際に、額を注文した「カニンハム・ギャラリー」は現在も営業しています。
実は私も、カニンハム・ギャラリーでコア(と言ってもベニア)の額をオーダーしたことがありました。オーナーのカニンハムさんに丁寧に商品の説明をして頂いたのですが、コアという素材に気後れして、思わず日本語で「でも、高いと困るし」と呟いたところ「高くないよ」と、カニンハムさんに日本語で返されたことは、良い思い出です。

ヒロのダウンタウン

ヒロのダウンタウン

ヒロの町並みや、ハマクア・コーストの景色、ハワイの花や食べ物のイラストとともに、日常を語るように書かれたエッセイは、平野氏がハワイ島の時間をとても楽しまれていたことが伝わってきます。「ハワイ島アロハ通信」は、ハワイ島に行きたい気持ちがじんわりと胸の中に広がってくる本です。

夜のヒロ。パレスシアターのネオンがノスタルジックな感じ

夜のヒロ。パレスシアターのネオンがノスタルジックな感じ


 

ハナレイ・ベイ (村上春樹 著)

村上春樹氏が海外で長く暮らしていた、という事をご存知の方も多いでしょう。でも、村上氏がカウアイ島に住んでいたことがある、という事はご存知ない方も多いのでは。
長編小説の「ダンス・ダンス・ダンス」をはじめ、村上氏のエッセイにもハワイは度々登場します。なかでもカウアイ島が舞台の「ハナレイ・ベイ」は、数年前に映画化もされた事もあって、村上春樹氏のポピュラーな作品になっているようです。
表題のハナレイ・ベイは、カウアイ島のノース・ショアにある湾です。カウアイ島のノース・ショアは、美しいビーチが多く、独特の雰囲気がある場所ですが、村上氏はハワイの中でも、このカウアイ島のノース・ショアが特にお好きなように思います。

早朝のハナレイ・ベイ。遠くに虹が見えます

早朝のハナレイ・ベイ。遠くに虹が見えます

さて「ハナレイ・ベイ」の中で、主人公の女性がヒッチハイクしていた日本人の若者を、車に乗せる場面があります。場所はカパアの「オノ・ファミリー・レストランの前」です。このくだりを読んだ時、思わず「ううむ」と唸ってしまいました。
オノ・ファミリー・レストランは、カパアのメインストリート沿いにあります。この辺りは、商店が多く車も多めです。レストランはT字路の角、横断歩道の前にあるので、お店の前あたりは車のスピードが緩みがち。それにお店がある方の車線がノース・ショア方面行きです。頼りなさそうに見えて、なかなか分かっているじゃないか若者。このさりげないディテールが、カウアイ島が好きな私にはたまりません。

閉店してしまった、オノ・ファミリー・レストラン

閉店してしまった、オノ・ファミリー・レストラン

オノ・ファミリー・レストランは、40年の歴史を持つローカル・レストランです。サイミンやロコモコ、オムレツや目玉焼きのブレックファスト・メニューが地元の人にも観光客にも人気がありました。
私のオススメはパンケーキとフレンチトースト。店員さんが「熱いから気をつけてね」と添えてくれた熱々のシロップと頂くパンケーキには、ホイップクリームがたっぷり乗っています。トッピングのフルーツもたっぷりです。店内には日系のオーナー、イシイさんの趣味らしい釣り道具が飾ってあって、ちょっと日本の食堂みたいな感じもしました。
しかし残念なことに、このコロナ禍でレストランは閉店してしまいました。カパアのシンボルのようなレストランでした。

オノ・ファミリー・レストランのバナナ・パンケーキ

オノ・ファミリー・レストランのバナナ・パンケーキ

 

 

片岡義男氏の本も、ご紹介しようと思っていました。
片岡義男氏は日本生まれですが、片岡氏の祖父は明治時代にハワイに渡った日系移民でした。移民先はマウイ島のラハイナです。片岡氏の著作にはハワイが舞台のものが多く、ラハイナが舞台のものも幾つもあります。片岡氏が書かれるラハイナは、時間が止まったような、古い映画を見ているような感じがします。
片岡氏の本については、またいつかご紹介できるといいな、と思います。

8月に発生したマウイ島の山火事で、亡くなられた方々とそのご家族のみなさまに、心よりお悔やみを申し上げます。また、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

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筆者プロフィール

NOPU
NOPU
ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/