ホノルル動物園は年間約60万人が訪れるハワイの一大スポットです。ここは合衆国で唯一、王室の土地を起源とする動物園であるという点でもユニークな存在です。

園内、ベビーカーや車椅子での移動に配慮している

園内、ベビーカーや車椅子での移動に配慮している

1874年に第7代の王となったデイビッド・カラーカウアは、1876年に30年間のリースという形で、現在のカピオラニ公園の土地を住人に提供しました。300エーカー(1.2平方キロメートル)の土地を管理したのはカピオラニ公園協会です。

ワイキキの高層ビルが間近に迫る

ワイキキの高層ビルが間近に迫る

ワイキーキーとは「水の湧き出るところ」という意味ですが、その名の通りカピオラニ公園を含む一帯はかつて湿地帯で、公園の辺りは池になっていました。王のためのイア・ロコ(養魚池)や小島などが点在していました。公園協会はこの土地を干拓整備後の1877年、カラーカウア王の妻の名をとり、クイーン・カピオラニ・パークと命名してオープンしました。

カピオラニ公園以前の風景

カピオラニ公園以前の風景

公園協会は1894年まで王室からの助成金があったため、当初はあまり人気のなかった公園をなんとか維持してきました。初期のカピオラニ公園の見所は、カラーカウア王が収集していた外来種の珍しい鳥たちと、毎年開催されたカメハメハ大王記念日に開催される競馬でした。1914年にはホノルル市郡が管理を引き継ぎ、今日に至ります。

公園にあった競馬場

公園にあった競馬場

ホノルル市郡は動物展示を本格的なものにするため、動物を収集し始めました。1916年にはアフリカゾウのデイジーを購入しました。市民が背中に乗って楽しんだのはこの頃です。しかし1933年のこと、デイジーが飼育員を踏みつぶすという痛ましい事故がありました。再発を怖れた動物園はデイジーを処分し、海に埋葬しました。

象のデイジーと飼育員

象のデイジーと飼育員

1929年に大恐慌が到来すると動物園経営は低迷し、閉園寸前となりました。なんとか持ちこたえたものの、施設は荒廃の一途を辿りました。しかし1945年から47年にかけて、キリンやダチョウ、エミュー、ゾウ、ラクダ、アシカ、数種類の鳥類、クモザル、カメなどが導入され、新しいホノルル動物園として再オープンしました。

動物園の入口ゲート

動物園の入口ゲート

1952年になると現在の場所に動物園を移設し、本格的な施設を建造しました。動物園のデザインも新しいコンセプトとなり、今日に見られる獣舎が完成しました。園内でははイオ(ハワイノスリ)やプエオ(ハワイコミミズク)、ネーネー(ハワイガン)など、ハワイ固有の動物や固有植物を見ることができます。

イオ(ハワイノスリ)

イオ(ハワイノスリ)

ギフトショップにはぬいぐるみなどのノベルティーグッズがあり、日本と同じような品揃えに見えますが、この他にも動物園や動物に関する文献や資料、児童図書なども充実しています。また、園内にはスナックバー(軽食店)が2箇所にあります。

ギフトショップ

ギフトショップ

アクセス

ワイキキの中心街から徒歩5~15分。ザ・バスを利用する場合は、2番、8番、13番、23番、42番の、ダイヤモンドヘッド方面を利用。

案内図(拡大すると詳細を確認できます)

案内図

物園の歴史

1876

第7代の王デイビッド・カラカウアが、300エーカー(1.2平方キロメートル)の土地をカピオラニ公園協会に譲渡

1877

クイーン・カピオラニ公園の開園。当初、公園では毎年キングカメハメハデーに競馬を開催

1914

ホノルル市郡が公園の管理を継承

1914-1916

カピオラニ公園で展示する動物の収集を開始

1916

アフリカゾウを購入し、公園での飼育を開始(*象は飼育員を殺害したため1933年に処分)

1929

ニューヨーク動物園協会から借り受けた6匹のガラパゴスゾウガメがパナマから到着

1935

希少な外来鳥類のための飼育小屋が完成

1947

ホノルル市郡はカピオラニ公園の基本計画を承認し、公園内の42エーカー(17ヘクタール)をホノルル動物園に指定。ポール・ブリーズを初代園長に任命

1952

動物園のデザインが見直され現在の形となる

1965

第2代園長ジャック・スロップを任命。職員は28名

1969

ホノルル動物園の運営支援のため非営利団体のZoo Hui(動物園協会)を設立

1979

第3代園長にジェローム・マーが就任

1982

インドのインディラ・ガンジー首相よりアジアゾウが贈呈される

1982-84

新しいマスタープランの策定に着手。アフリカサバンナ、熱帯林、アイランドという3つのゾーンを計画

1986

ホノルル動物園がアメリカ動物園協会に認定される(全米で2番目に古い動物園)

1988

子供動物園の完成

1990-94

アフリカのサバンナ施設がオープン

1993

第5代園長にケン・レッドマンが就任

1997

動物園が公園・レクリエーション部から新設のエンタープライズ・サービス部に移管

2005

新しい動物病院が完成

2006

新しい子供動物園(ケイキ・ズー)とオランウータンの展示施設が完成

2009

第6代園長にスティーブン・ウォーカーが就任

2011

第8代園長にマニュエル・モリネド(元サンフランシスコ動物園園長)が就任

従業員は73名(契約社員とパートタイムを含む)

2013

第9代園長にジェフ・メイホンが就任

2015

第10代園長にベアード・フレミングが就任

2017年~

第11代園長にリンダ・サントスが就任。今日に至る

 

住所:151 Kapahulu Ave, Honolulu

電話:808-926-3191

開園日:毎日の午前9時~午後4時30分

休園日:12月25日

飼育展示動物数:約1,000

入園料:大人(13歳以上)   19ドル

子供(3歳~12歳) 11ドル

2歳以下の子供     無料

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。