火山活動と洞窟の誕生
1959年、キラウエア・イキで大噴火がありました。巨大な溶岩の噴水が出現し、このときの噴火で流れ出した溶岩が手前の大きなクレーターに流れ込んで、現在に見られるような溶岩湖(後のクレーター)を出現させたのです。
キラウエア・イキの南にはサーストン・ラバ・チューブがあります。誕生したのは500年ほど以前とされますが、1913年に発見されました。その後、度重なるキラウエア・カルデラやキラウエア・イキの火山活動によってこの洞窟も内部崩落などの影響を受けつつ今日に至ります。近年では1959年の大噴火で大きくその地形を変えました。ちなみに、キラウエア火山の火山活動によって誕生した洞窟は数多くあり、なかでもカズムラ・ケイブは総延長40kmと、(火山性洞窟として)世界最長を誇ります。
洞窟が形成された当初、洞窟内の天井部には溶岩鍾乳という、熱せられた溶岩が無数に垂れ下がっていました。サーストン・ラバ・チューブはかつてハワイ語でナーフクと呼ばれましたが、これは「突起(物)」を意味します。当初見られたこの溶岩鍾乳の景観からそのように呼ばれました。残念なことに、これらの溶岩鍾乳はすべて折られてしまい、今日、その痕跡はほとんどありません。とは言え、誕生当初の洞窟の雰囲気は十分に味わうことができます。
この洞窟におけるもっとも大きな特徴は円形に近い断面に見られます。円形に近いということは、洞窟が形成されるとき、大量の溶岩が内部の空間をすべて満たし、とても速い速度で移動したことを意味します。また、洞窟の壁面に艶がある部分と少ない部分とに分かれるのは、前者は高温の状態だった時間が長く、後者は形成後、早期に外気に触れて劣化したことを示します。また、壁面全体が比較的滑らかなのは、速度に加え、溶岩が高温(約1000度)を維持していたことを教えます。
内部の特徴
この他にも、溶岩鍾乳の跡や、成長をしはじめた箇所、何度も流れ込んだ溶岩流によって作られた壁面の境目、天井部から突き出したオヒアの根など、さまざまな特徴を確認できます。さらには、照明から得た光で光合成を行っている苔やシダ類、天井を押し上げた火山ガスの跡なども確認できます。現在は安全上の理由が閉ざされていますが、照明を用意して探索する探険コースもあります。
キラウエア・イキの噴火では吹き上げられた溶岩が次々と積もり重なってプウ・プアイという小さな山をつくり出しました。プウとは「丘」、プアイとは「盛り上がる、流れ出す」という意味です。一般に火山噴火があると当地の森林は火災を起こして焼失しますが、プウ・プアイでは空中高く吹き上げられた噴石が落下して温度を下げて森に落下したため、一部は焼失を免れました。しかし高温の状態が続くため、木はすべて立ち枯れました。わずかですが焼失を免れた枯木が白い内皮をあらわにし、プウ・プアイの山に散りばめられました。写真は1959年の様子です。
洞窟は午前8時から午後8時まで内部照明がありますが、それ以外は消灯しています。(*近くのトイレは午前9時から午後5時まで使用できます。)早朝や夜の入洞は避けた方が良いですが、入洞する場合は照明を携帯することを勧めます。内部では天井や側壁からの落石、天井の低い部分水たまりやそれに起因するスリップ、不整地での躓きなどの危険があります。十分注意をして歩きましょう。
周囲の自然
洞窟の周辺は野鳥の宝庫です。早朝や夕暮れは比較的訪れる人も少なく、この時間帯であればアパパネやイイヴィなどのハワイミツスイや、イオ(ハワイノスリ)などが見られる可能性が高くなります。一帯はオヒアの森で、この木に咲くレフアの花蜜を求めてハワイミツスイが飛び交います。ここはまたシダの群生地でもあります。ハープウと呼ばれる、高さが3m以上ある木生シダをはじめ、アマウ、プクプク、ウルヘなどが見られます。
サーストン・ラバ・チューブは、ハワイ火山国立公園に入ってすぐ左の道を10分ほど進むと現れるキラウエア・イキ展望台のすぐ先にあります。
筆者プロフィール
- カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。
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