ハワイアン・モンク・シールは、ハワイ固有のアザラシです。太平洋の真ん中にあるハワイ諸島には、人間が住むまで、哺乳類はほとんど住んでいませんでした。ハワイアン・モンク・シールは、ハワイアンが移り住む前から、ハワイ諸島にいた哺乳類のひとつです。ハワイアン・モンク・シールは、極めて生息数が少なく、絶滅危惧種に指定されています。今回のハワイ日和は、ハワイアン・モンク・シールのお話しです。

波打ち際で、お昼寝するハワイアン・モンク・シール

波打ち際で、お昼寝するハワイアン・モンク・シール

ハワイアン・モンク・シールは、熱帯気候に住んでいるモンク・シールというアザラシの種類で、現在ハワイアン・モンク・シールを含めて二種類しか生息しないうえ、もう一種類の地中海に住むモンク・シールも絶滅が危惧されています。現在、ハワイアン・モンク・シールの個体数は約1400頭ほど。この生息数でも、近年の保護活動で増えてきたのだそうです。モンク・シールが、数を減らした主な原因は、乱獲です。狩猟が禁止された以降も、環境の悪化などにより、生息数は減っていく一方でした。ハワイアン・モンク・シールも、生息数が安定してきたのは、ここ数年のことのようです。

波がきても熟睡中のようです

波がきても熟睡中のようです

それでも、1400頭というのはとても少ないですね。しかも、ほとんどのハワイアン・モンク・シールは、ニイハウ島よりも西にある、北西ハワイ諸島にいます。ニイハウ島から東の、私たちが観光に行ける「ハワイ諸島」に住んでいるのは、たった300頭ほどだそうです。300頭!ハワイアン・モンク・シールを見ることができたら、かなりラッキーと思わなくてはいけないでしょう。本当に幸運なことに、私は何度かハワイアン・モンク・シールを見かけたことがあります。見かけた場所は、全部カウアイ島です。ハワイアン・モンク・シールは、北西ハワイ諸島に多く住んでいるので、主要なハワイ諸島の中では、ニイハウ島に次いで西端にあるカウアイ島での目撃が多いようです。

ポイプ・ビーチでお昼寝中のハワイアン・モンク・シール

ポイプ・ビーチでお昼寝中のハワイアン・モンク・シール

カウアイ島の中でも、ハワイアン・モンク・シールの目撃情報が多いと言われる場所が、カウアイ島の南にあるポイプ・ビーチ。私がハワイアン・モンク・シールを見かけたのも、ポイプ・ビーチやその近くのビーチがほとんどです。「サニー・ポイプ」とも呼ばれるポイプ地区は、カウアイ島の中では晴天率が高く、ホテルやコンドミニアムが集まっています。その中心にあるポイプ・ビーチは、観光客に人気のビーチです。防波堤があるため、波も穏やか、小さな子供も安心して遊ぶことができます。そんなポイプ・ビーチでは、日光浴をする人たちに混じって、ハワイアン・モンク・シールがお昼寝していることがあります。

ハワイアン・モンク・シールの周囲にテープを貼って保護するボランティア

ハワイアン・モンク・シールの周囲にテープを貼って保護するボランティア

ハワイアン・モンク・シールがビーチにあがってくると、ライフセーバーか保護活動を行っているボランティアの方が、ハワイアン・モンク・シールの周囲に黄色いテープを張って、人間が近づきすぎないようにします。人間よりもハワイアン・モンク・シールのほうが、ハワイのビーチで日光浴をする優先権を持っているのです。ビーチにいるハワイアン・モンク・シールは、たいてい目をつぶってほとんど動かずに寝ています。時々、小さなヒレ状の前足で、体のどこかをちょっと掻いたりするくらいです。寝ながら「カイカイカイ」という感じに、脇腹を掻いているハワイアン・モンク・シールを見ていると「ものぐさ」という言葉が頭に浮かんできます。ビーチから海へ入るハワイアン・モンク・シールを見かけたことがありますが、なんとゴロンゴロンと横に転がって海に入っていきました、なんてぐーたらしているのでしょう。

海を泳ぐハワイアン・モンク・シール

海を泳ぐハワイアン・モンク・シール

陸上では、ものぐさでのんびりしている感じがするハワイアン・モンク・シールですが、海ではかなり素早く動きます。魚やイカ、タコ、エビなどを食べていますが、海の中で魚を捕まえるために、俊敏に泳いでいるわけですね。ハワイアン・モンク・シールは、ハワイ語で「イリオ・ホロ・イ・カ・ウアウア(荒波の中を走る犬)」という名前で呼ばれています。ところが、海で泳いでいるときに、捨てられたロープや網などのゴミにかかってしまうハワイアン・モンク・シールもいるそうです。ゴミを捨てないことももちろんですが、ビーチでゴミを見つけたら、ハワイアン・モンク・シールのためにも拾わなくてはいけませんね。

ハワイアン・モンク・シールの親子

ハワイアン・モンク・シールの親子

ハワイアン・モンク・シールは、ビーチで子育てをします。私も2回、子育て中のハワイアン・モンク・シールを見かけたことがありますが、親子の周囲は、かなりの広さで立ち入り禁止のテープが張られ、ボランティアの方がずっと待機していらっしゃいました。ハワイアン・モンク・シールの母親は約6週間、ビーチで子供のそばを離れずに子育てをします。その間、母親は食事もしないそうです。子育てが終わって、母親は子供から離れると、二度と戻って来ないそう。もし、子供がまだ自立できないのに、母親が何かに驚いて逃げてしまったら、子供は取り残されて死んでしまうかもしれません。そのため、子育て中の親子には、より近づいたり驚かせたりしてはいけないのです。

上の写真とは別の親子。周囲には保護のため網が張られていました

上の写真とは別の親子。周囲には保護のため網が張られていました

カウアイ島の目撃情報が多いハワイアン・モンク・シールですが、他の島でも見たという話も聞きます。私の友人はワイキキ近くのビーチで、ハワイアン・モンク・シールを見かけたそう。以前、ハワイ島のヒロでハワイアン・モンク・シールが頻繁に目撃された時は、地元新聞のニュースにもなり、たくさんの人が見物に来たそうです。ハワイ島、サウス・ポイント近くのグリーン・サンド・ビーチにも「モンク・シールに近づかないで」の立て看板がありました。実は、私もグリーン・サンド・ビーチで、水中を横切るハワイアン・モンク・シールの影をみたような・・・。ともあれ、ハワイアン・モンク・シールを見かけたら、少し遠くから見守るようにしたいものです。

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筆者プロフィール

NOPU
NOPU
ハワイは20年来、ネイバーアイランドへのリピーター。バードウオッチと植物観察が好きで、ハワイでもトレッキングをしながら探鳥を楽しんでいる。ローカル・レストランと古い建物の探求、地元のイベントに参加することも好き。
ALOHA NOPU:http://www.alohanopu.sakura.ne.jp/