カイヴァ・リッジ・トレイル

オアフ島のラニカイは背後を包み込むように山が迫り出しています。これはかつての火山活動が残したクレーターの跡で、ココ・クレーターに似て東側が崩れ落ちています。クレーターの南側の稜線をなぞるようにトレイルがあり、山頂に立つピルボックスまで登ることができます。一般にはラニカイ・ピルボックス・トレイルと呼ばれますが、正しくはカイヴァ・リッジ・トレイルと言います。「(カ)イヴァ」とはオオグンカンドリのこと。この山の周辺に多くのイヴァが飛び交っていることが由来です。

ラニカイの住宅街から見たトレイルの稜線。写真の右上にオオグンカンドリが飛んでいる

ラニカイの住宅街から見たトレイルの稜線。写真の右上にオオグンカンドリが飛んでいる

ラニカイ・ピルボックスの歴史

ピルボックスとは要塞(トーチカ)を指します。第二次世界大戦中、ハワイ州では日本軍の急襲を警戒して諸島各地にピルボックスが作られました。ただし、ラニカイのピルボックスは武器を設置したわけではありません。海上の船舶の位置を特定するために必要な観測機器を設置していました。終戦後は民間に払い下げとなり、何度か転売もされましたが、現在はナー・アラ・ヘレ(州のトレイル・アクセス局)が買い上げ、トレイルとして整備されて今日に至ります。ただし、単独ではなく、民間企業と共同で維持管理を行なっています。

トレイルの入口

トレイルの入口

ラニカイは、かつてはスイカ畑が広がる農業地帯でした。その後に富裕層の別荘が建ちはじめました。今日ではラニカイと、その隣のカイルアは全米でも指折りの美しいビーチとして知られます。

トレイルから見える景色

トレイルから見える景色

カイヴァ・リッジ・トレイルは、カイルア湾とコオラウ山系を一望できる景色を、わずかな登りで堪能できるところから、毎日多くの訪問者を迎えています。ナー・アラ・ヘレによれば、最近の調査では、1日の平均訪問者は1,300人を超えるようです。

山頂のピルボックス

山頂のピルボックス

 カイヴァ・リッジ・トレイルはの頂上とその手前にあるピルボックスは、1943年に沿岸砲兵隊の観測施設として造られました。その後1980年代に今日の運営形態になりました。トレイル入口はカエレプル・ドライブにありますが、この他にも頂上へのトレイルはいくつかあります。ただしいずれも途中で私有地を横切ることになる上に、土砂を海まで落とす危険性があることから、いずれも一般人の通行はできません。

山頂の手前にあるもうひとつのピルボックス

山頂の手前にあるもうひとつのピルボックス

気をつけてほしいこと

トレイルはつねに登山者で賑わいます。しかし全体に急峻な地形であり、ピルボックス周辺は岩場となっています。また、登山口の土壌は粘土質のため、雨が降ると滑り台と化します。サンダルで登る人を多くみかけますが、転倒する人は少なくありません。トレッキングシューズを履くことを勧めます。

手前のピルボックスで景色を楽しむ人たち

手前のピルボックスで景色を楽しむ人たち

また、ラニカイは観光地として整備されていないので、駐車場はなく、ビーチ以外に公共スペースはありません。車で訪れる場合は、手前のカイルアの駐車場に停める以外に方法はないのですが、週末はこの駐車場も満車となります。早朝に訪れるか、バスを利用しましょう。

トレイルの風景

トレイルの風景

 

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。