ハワイ島最南端に向かってサウスポイント・ロードを下っていくと、間もなく右に風力発電群が現れます。一帯は牧草地帯ですが、よく見ると奇妙なことに気づきます。すべての木が南西に向かって枝を伸ばしているのです。これは北東から吹きつける貿易風の影響です。

サウスポイント・ロード

サウスポイント・ロード

ハワイ島最南端のカラエは、アメリカ合衆国の最南端でもあります。その手前の分岐を右に折れるとカウラナ岬に至ります。ここはかつて豊かな漁場として栄えたところで、ビショップ博物館が収集した古代の釣り針の大半はこの一帯で発掘されました。海岸には他にもカヌーをもやった穴の跡などが残ります。岬の突端にある簡易灯台の足元にはカラレア・ヘイアウが残ります。ここは豊漁と安全を祈願する漁師のためのヘイアウで、女人禁制でした。一帯は合衆国の国立歴史遺跡地(National Historical Landmark)となっています。

南西に傾いた木

南西に傾いた木

無人灯台は船舶用のものです。1906年に無人灯台として設置され、1908年には沿岸警備隊によって拡充され灯台守も配備されました。拡充の理由は、釣り針などの考古学的遺跡を保護するためです。ホノルルのビショップ博物館による依頼で行われました。1929年には鋼鉄製の塔となりましたが、1972年には高さ10mのコンクリート製簡易灯台となり、再び無人となって今日に至ります。現在はソーラーパネルで電源供給しています。

最南端の灯台

最南端の灯台

分岐点へ戻り、もうひとつの道に入ってカラエ湾へ行きましょう。地面は浸食が激しいので、あまり先に車を停めない方がよいでしょう。湾の直前を海に向かって左手の少し高くなったところにグリーンサンドビーチに至るトレイルがあります。ここは関係者以外の車の進入は禁止されていますが、管理されていないため、人を運んだり水を売る車が何台もあり、土埃をあげて何度も行き来します。

グリーンサンドビーチへのトレイルはほぼ海岸線に沿って伸びます。最初はアア溶岩(ゴツゴツとした溶岩)を歩きますが、ほどなく溶岩と砂地、草原が入り交じった地形となります。周辺にはビーチ・ナウパカやハウ、イリマなどに混じり、黄色のトゲを持ったオーカラカラや、ヒルガオの仲間のポーフエフエ、ハマビシの仲間のノフなどが、控えめではありますが浜辺に自生しています。

カヌーをもやった穴の史跡

カヌーをもやった穴の史跡

動物の姿は海鳥を除いてほとんど見かけませんが、トレイルの岩陰にはヒメネズミや昆虫たちを見かけます。潮流の関係なのか、波打ち際にゴミの多いのが少し残念なところです。トレイルは途中、何度も分岐しますが、右手に海が見える範囲を歩いていれば迷うことはありません。

前方に見える小高い地点に到着すると、岩場からグリーンサンドビーチを見下ろせます。ビーチへ降りるルートはこの先なので間違えないようにしましょう。この一帯にはビーチ名の由来ともなった橄欖(かんらん)石の小さな結晶が点在します。ビーチが緑色をしている理由は、マグマのなかに含まれている橄欖石の結晶が緑褐色をしているためです。砂には他の鉱物も混じっているので全体には灰緑色に見えます。地元ではこの結晶を緑水晶と呼び、かつては採集して利用したこともあったようです。コナ地区のショップでは現在も緑水晶と称して、結晶の入った石を販売しています。

やがて、右手の岩場が少し切れたところからビーチを見下ろすところに出ます。手すり付きのはしごがあるのでそこを降り、踏み跡を辿って行けば下に到着します。海で遊ぶ人は多いですが、かなり潮流が強いので泳ぐのは避けたほうがよいでしょう。ビーチでのひとときを楽しんだなら、来た道を戻ります。

アプローチ

グリーンサンド

グリーンサンド

カイルアコナからは11号を南下してナアレフの町の少し手前で右折し、サウスポイント・ロードを南下します。ヒロからはやはり11号を南下し、ナアレフの町を過ぎたら左折してサウスポイント・ロードへ入ります。いずれの方向から来ても、サウスポイントの標識が手前にあります。サウスポイント・ロードを南下して南端に到達する少し手前を左に入り、建物がいくつかあるところを通り過ぎると海岸(カウラナ湾)に突き当たります。駐車地点からグリーンサンドビーチへは、徒歩で往復2時間半ほどです。

トップページはグリーンサンドビーチの全景です。次回はハワイ固有のハイビスカスを紹介します。

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。