グリーンサンドビーチ(パパコレア)は、アメリカ合衆国の最南端となるハワイ島南岸にあります。国道11号線を南に折れて牧場のなかを下っていくと、風力発電地帯を抜けて間もなく、サウスポイント(カラエ)とカウラナ岬との分岐点に達します。グリーンサンドビーチへ行く前に南端のカウラナ岬へ寄ってみましょう。右折するとほどなく到着します。この岬はかつて豊かな漁場として栄えたところです。ビショップ博物館が収集した釣り針の大半はこの一帯で発掘されました。海岸にはいまもカヌーをもやった岩穴の跡が残ります。岬にある赤と白に塗り分けられた海上標識の足元にはカラレア・ヘイアウがあります。ここはかつて豊漁と安全を祈願する漁師のために建立した神殿で、女人禁制でした。一帯は合衆国の国立歴史遺跡地となっています。

彼方にグリーンサンドビーチを取り囲む丘が見える

彼方にグリーンサンドビーチを取り囲む丘が見える

先ほどの分岐点へ戻り、右折(国道から南下してそのままグリーンサンドビーチへ行く場合は左折)してカラエへ向かいましょう。途中に有料駐車場のようなものがありますが、ここに停める必要はありませんのでそのまま通過し、少し進むと広い海岸に出ます。地面は整備されていないので、あまり遠くに車を停めない方がよいでしょう。海に向かって左手の少し高くなったところにグリーンサンドビーチに至るトレイルの入口があります。以前は車で入ることができましたが、現在は関係者以外進入禁止となりました。しかしいまも頻繁に車が行き交います。違法を承知でハイカーを有料で車に乗せたり、飲料水を販売しています。おかげで車が通るたびに猛烈な砂埃が上がります。

ルートはほぼ海岸線に沿って伸びます。初めのうちはゴツゴツとしたアア溶岩の上を歩きますが、ほどなく溶岩と砂地が入り交じった地形となります。周辺にはビーチナウパカやハウ、タコノキなどに混じり、黄色のトゲを持ったヘッジホッグゴードや、ヒルガオの仲間のポーフエフエ、ノフ、イリマなど、海辺で育つ植物が見られます。

動物は、海鳥を除いてほとんど見かけませんが、トレイルの岩陰にはヒメネズミや昆虫たちが生息しています。潮流の関係で波打ち際にゴミが漂着しているのは問題になっています。トレイルは途中、何度も分岐しますが、海から遠ざからずに歩いていれば迷うことはありません。

グリーンサンドビーチの全景

グリーンサンドビーチの全景

やがて前方に小高い丘が見えてきます。最初は低い位置にありますが、近づくにつれて大きくなります。U字型に削られたビーチにはどこからでも降りられそうですが、危険ですので、左手奥に回り込みましょう。簡易なものですが、階段が設置されています。階段を降りると、右手の岩場に足場が掘られているので、ここを通って下へ降ります。

グリーンサンドビーチには名の由来となった橄欖(かんらん)石の小さな結晶が点在します。ビーチが緑色をしている理由は、マグマのなかに含まれている橄欖石の結晶が緑褐色をしているためです。砂には他の鉱物も混じっているので全体には灰緑色に見えます。地元ではこの結晶を緑水晶と呼び、かつては採集して利用したこともありました。コナ地区のショップでは現在も緑水晶と称して、結晶の入った石を売っています。ハワイ語のパパコレアとは「砕ける波」という意味があります。

海はかなり潮流が強いので泳ぐのは避けたほうがよいでしょう。子供が波に体をさらわれ、危うく岩場に叩きつけられそうになるのを目撃したこともあります。ビーチでのひとときを楽しんだなら、来た道を戻りましょう。

見た目が緑色に見えるグリーンサンド

見た目が緑色に見えるグリーンサンド

アプローチ
カイルアコナからは11号を南下してナアレフの町の少し手前で右折し、サウスポイント・ロードを南下します。ヒロからはやはり11号を南下し、ナアレフの町を過ぎてワイオヒヌの集落に入ったら左折して南西へ進み、サウスポイント・ロードに合流したらもう一度左折します。いずれの方向から来ても、サウスポイントの標識が手前にあります。目的地に近づいたら途中の駐車場には停めず、広場まで進んでください。トレイル入口からグリーンサンドビーチへは、徒歩で往復2時間強といったところです。途中、日差しを遮るものはありませんから、水は十分に(往復で2リットルほど)持参しましょう。

注意事項
終着点からビーチへ下る道はかなり急傾斜なので、子連れの場合は十分気をつけましょう。降りてしまえば意外に簡単に思える斜面ですが、自信のないときは潔く引き返すべきです。サウスポイント・ロードは道幅が狭く、レンタカーを運転して事故にあった場合は保険補償の対象外となることに気をつけてください。

緑色に見えるのは橄欖石の結晶、黒い粒は溶岩

緑色に見えるのは橄欖石の結晶、黒い粒は溶岩

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筆者プロフィール

近藤純夫
カワラ版のネイチャー・ガイド。本業はエッセイスト兼翻訳家だが、いまはハワイの魅力を支えている自然をもっと知ってもらうことに力を注ぐ。趣味は穴潜りと読書。ハワイ滞在中も時間をやりくりして書店通いをしている。